パイレーツ大躍進の秘密は「イタリア代表クローザー」にあり (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 前半戦を振り返ると、ジャイアンツは自慢の先発投手陣が崩壊しました。2010年と2012年、近年で2度もワールドチャンピオンになれたのは、強力な先発陣を誇っていたからです。2009年以降、ジャイアンツ先発陣の防御率は毎年、メジャーリーグ全体で6位以内に入っていました。しかし今年は、現在メジャー30球団中25位。まったくもって本来の実力を発揮できていません。元サイ・ヤング賞投手のティム・リンスカム(4勝9敗・防御率4.66)やバリー・ジート(4勝6敗・防御率4.44)、さらに昨年完全試合を達成したマット・ケイン(5勝5敗・防御率4.85)らエース級のピッチャーが軒並み防御率4点台。また、かつて日本でプレイし、メジャー復帰後2年連続ふたケタ勝利を挙げているライアン・ボーグルソンは防御率7点台(2勝4敗・防御率7.19)。その後、右手を骨折して故障者リスト入りしました。現在、ジャイアンツ先発陣は、まさに「火の車状態」です。

 一方、大型補強の結果、チーム年俸総額がニューヨーク・ヤンキースに次ぐ2億1630万ドル(約219億円)となったドジャースは、「今年こそはリーグ優勝間違いなし」と言われていました。しかし、フタを開けてみれば、故障者続出という最悪なスタートとなったのです。2009年サイ・ヤング賞投手のザック・グレインキー(7勝2敗・防御率3.91)は開幕早々、試合での乱闘で骨折して戦線離脱し、ボストン・レッドソックス時代にエースだったジョシュ・ベケット(0勝5敗・防御率5.19)と、6年連続ふたケタ勝利中のチャド・ビリングズリー(1勝0敗・防御率3.00)は故障により今季絶望。唯一、明るい話題といえば、キューバから亡命し、6月のデビュー直後から大活躍のヤシエル・プイグ(33試合・打率.409・8本塁打・19打点)ぐらいでしょう。

 これだけ大金を投入して負け越していれば、他の地区なら監督の解任問題になります。ただ、低迷しているものの、首位のダイヤモンドバックスとは4.5ゲーム差。幸いにも西地区全体の勝率が悪いので、解任問題に発展していないのです。地元ロサンゼルスでのドジャース人気はすさまじく、30球団中で観客動員数200万人突破一番乗りを果たしました。ただ、このまま調子が上がらないようだと、観客の足も遠のいてしまうでしょう。

 今年はア・リーグ、ナ・リーグともに、似たような前半戦だったと思います。お金のないアスレチックスやパイレーツが快進撃を見せ、チーム年俸総額トップ2のヤンキースとドジャースが低迷。「マネーボール」の極致とも言える図式となりました。はたして後半戦は、どんな展開が待っているのでしょうか。2013年のメジャーリーグ後半戦に、ぜひ注目してください。

※7月9日現在

著者プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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