【WBC】選出メンバーで分かった、アメリカ代表の本気度 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 まず、投手陣で注目してもらいたいのは、中継ぎ投手の多さです。暫定メンバーで選ばれた14人の投手のうち、リリーフ投手は10人。そしてその10人のうち7人は、メジャーリーグで中継ぎを本職としている投手なんです。

 メジャーでも日本でも、野球は「先発投手の出来が試合を大きく左右する」と言われています。なぜならば、先発の調子が良ければ、7回ぐらいまでひとりで投げられるからです。しかしWBCは、前回大会よりも球数制限が各ラウンド5球ずつ減ったことで(1次ラウンド:65球、2次ラウンド:80球、決勝ラウンド:95球)、先発投手が3~4回で降板する可能性も高くなりました。そうなれば、残された長いイニングを託されるのは、中継ぎ投手となります。つまり、WBCでは先発よりも「中継ぎ投手の出来が試合を大きく左右する」と言えるのです。

 また、中継ぎ投手を選ぶ際、我々はつい、「各球団のクローザーを全員集めるのが最強」と思いがちです。しかしクローザーというのは、最終回に投げると実力を発揮するものの、7回や8回に登板したときは、意外と打たれていることが多いのです。これは、クローザーの登板するタイミングが普段の役割ではなかったことと、無関係ではないと思います。

 今回選ばれた中継ぎ投手たちは、日本での知名度は低いし、アメリカでも目立つ存在ではありません。しかし、彼らはメジャーを代表する『中継ぎのスペシャリスト』なんです。有名どころのクローザーを集めるのではなく、地味ながらも中継ぎのスペシャリストを揃えるあたりが、本気でWBC制覇を狙っているなと感じました。

 今回の中継ぎ陣全員を取り上げたいぐらいですが、中でも気になるふたりの選手を紹介します。まずひとり目は、クリーブランド・インディアンスに所属するビニー・ペスタノというサイドスローの右投手です。ペスタノは2011年、新人ながら67試合に登板して防御率2.32という優秀な成績を残し、さらにチームトップの1試合平均12.2奪三振を記録しました。右バッターには滅法強く、スラーブ(スライダーとカーブの中間的な変化をする球種)を武器に、右バッターに対して被打率.115をマーク。なんと130打数で15本しかヒットを打たれなかったのです。このインディアンス期待の中継ぎ投手を、ぜひ覚えておいてください。

 そしてふたり目は、サンフランシスコ・ジャイアンツに所属するジェレミー・アフェルトという33歳のベテラン左腕です。アフェルトはストレートとカーブの2種類しか球種を持っていません。しかし2011年には左バッターに対して被打率.144と、完全に相手を押さえ込み、2012年のポストシーズンでは10試合に登板して無失点だったのです。そんなジャイアンツの世界一に貢献した中継ぎ投手も、アメリカ代表に名を連ねました。

 今回のアメリカ代表は、左バッターにも右バッターにも対応できるよう、実にバリエーションに富んだ中継ぎ投手を集めたと思います。これはWBC3連覇を狙う日本にとって、非常に脅威となるでしょう。

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