【MLB】新旧交代進行中。ベテランを抱えるヤンキースの高齢化対策 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 それでも、ヤンキースの「まだ使えるうちにベテランを出し、新しい戦力を育てて勝つ」というチーム戦略はぶれません。事実、松井選手と入れ替わるようにトレードで獲得したカーティス・グランダーソンは、昨年、ア・リーグ2位の41本塁打、リーグトップの119打点・136得点という予想以上の大活躍をしました。市場価値が高いうちにベテランを売り、新たに加入した選手が成長することで、ヤンキースはチームの高齢化を回避し、長きに渡って『常勝軍団』のポジションを維持しているのです。

 それができるのも、ファームでの選手育成に余念がないからです。『ベースボールアメリカ』誌では毎年、メジャー30球団のファームにどれだけ有望な選手がいるかを示す『タレントランキング』を発表していますが、ヤンキースは昨年5位、今年6位と、常に上位につけています。豊富な資金力に頼って補強している印象がありますが、ヤンキースは決してそれだけではないのです。

 近年も人気ベテラン選手の後継者となりそうな若手が、続々と出てきています。特にヤンキースはラテンアメリカ出身の選手発掘に定評があり、今、最も注目されているのがメキシコ出身のマニー・バヌエロスという投手です。将来のエース候補と期待される20歳のサウスポーで、一番の武器はチェンジアップ。まだメジャーの経験はありませんが、黒田博樹投手との契約を1年にしたのも、バヌエロスの成長を見越してのものだと言われています。

 また、ジーターの後継者には、ドミニカ出身のエドゥアルド・ヌニェス(24歳)という選手が順調に育っており、レフトにもリーグ屈指の俊足を誇るブレット・ガードナー(28歳)がバーニー・ウィリアムス以来の生え抜き外野手として頭角を現しています。さらに昨年、オールスターに初出場した中継ぎのデビッド・ロバートソン(26歳)はリベラの後継者と言われており、名捕手ポサダの跡継ぎも23歳のオースティン・ロマインが名乗りを挙げています。

 このように続々と生え抜きが出てくるのが、ヤンキースの強さです。今年1月に若手有望株のヘスス・モンテロ(22歳)をシアトル・マリナーズにトレードに出すほど、ファームの充実度は突出しています。ヤンキースはベテランを多く抱えていますが、チーム全体が高齢化にならぬよう有望な若手を育てているので、今後も『常勝軍団』としてメジャーリーグを牽引していくことでしょう。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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