【MLB】新旧交代進行中。ベテランを抱えるヤンキースの高齢化対策
左から、マリアノ・リベラ(42歳)、ホルヘ・ポサダ(40歳)、デレク・ジーター(37歳)。ヤンキースの黄金時代を築いた生え抜きのベテランたち 1976年、メジャーリーグにFA制度が導入されたことで、ニューヨーク・ヤンキースのジョージ・スタインブレナー・オーナーは「強くするためには金を惜しまない」と発言し、他球団から大物選手を次々と獲得していきました。その補強策により、「金で買った最強チーム」と揶揄(やゆ)されながらも、ヤンキースは1977年、1978年と2年連続で世界一の座を獲得。栄光からしばらく遠ざかっていたチームは、FA選手の獲得戦略により、復活を遂げたのです。
しかし、その栄光の時代は長く続きませんでした。1981年のリーグ優勝を最後に、再び低迷期に入ります。そこでヤンキースは、1990年代になって、チーム戦略を根本から変えることにしました。大金を注いでFA選手を引き抜くより、むしろ地道にファームで若手を育て、そこから新たな戦力を補強する方向へと舵を取ったのです。
その結果、先発にはアンディ・ペティット、抑えにはマリアノ・リベラ、センターにはバーニー・ウィリアムス、ショートにはデレク・ジーター、そしてキャッチャーにはホルヘ・ポサダと、ファームで育った若手が主要ポジションで次々とデビュー。彼らの成長により、ヤンキースは1995年から今日まで、17年間で16回もプレイオフに進出し、『9年連続地区優勝(1998年~2006年)』や『ワールドシリーズ3連覇(1998年、1999年、2000年)』といった偉業を成し遂げたのです。もちろん、アレックス・ロドリゲスやCC・サバシアのように、大金を使って補強した例もあります。しかし、ヤンキースの屋台骨を支えたのは、間違いなくファーム出身の選手たちです。彼らの存在なくして、毎年優勝争いに加わることはできなかったでしょう。
ただ、この黄金時代を継続するには、常にチームの若返りを図らなければなりません。アメリカでは「ベテラン選手は、まだ使えるうちに出せ」という不文律があり、各球団ともそうやって若返りを進めています。しかし、人気ベテラン選手を多く抱えるヤンキースは、ファンからの反発も他球団とは比較になりません。2006年オフに絶大な人気を誇ったバーニー・ウィリアムスと契約しなかったときも、2009年オフにワールドシリーズMVPの松井秀喜選手を放出したときも、そして昨年オフ、チーム一筋17年間も貢献したポサダと契約せずに引退へと導いたときも、ヤンキースファンは大いに嘆きました。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)