【高校野球】「下剋上球児」の奇跡は終わらない 廃校寸前、16年連続初戦敗退だった昴学園が三重王者として迎える夏 (2ページ目)
【充実した指導スタッフ】
白山と昴学園の選手たちの共通点を聞くと、東監督はこう答えた。
「根本は自分に自信がないところ。ウチに入ってくるのは、中学時代に強豪の控えだった子か、弱小のレギュラーだった子。野球も勉強も自信がないけど、なんとか高校で頑張ろうという子が入ってきてくれます」
白山との大きな違いは、寮生活を通して育成できる点だろう。白山では2時間に1本しか列車が来ないローカル線・名松線で、約2時間かけて通学する選手もいた。
指導スタッフも充実している。東監督を支えるのは、72歳のベテラン指導者・冨山悦敬コーチ。かつて松阪商の監督として、2018年夏の三重大会決勝で白山に敗れた奇縁がある。
現在、県内有数の遊撃手として注目される和志武涼一(わしたけ・りょういち)は、四日市南ボーイズに所属した中学時代は控え内野手。昴学園に入寮して1週間で「学校をやめたい」と申し出る、目立たない選手だった。だが、冨山コーチが「こいつの守備はええよ」と東監督に進言したことから、一躍中心選手にのし上がった。
ほかにも投手指導に定評がある池田泰一朗(たいちろう)コーチなど、計7人の指導チームを組んでいる。東監督は「それぞれの個性を生かしてもらって、助けてもらっています」と語る。
今春の三重を制したとはいえ、チーム内に浮ついた様子はない。冨山コーチは呆れ気味にこうつぶやいた。
「優勝したといっても、地区予選を入れて8試合中7試合は負けていたかもしれない試合やったから。ちょっとは自信になるかと思ったけど、全然そんな様子がないね」
選手を代表して、主将の郁島も同調する。
「春は危ない試合ばかりでしたし、自分たちの力は全然ないですから。優勝して浮かれることはないです。夏は野手陣がもっと打って、投手陣を助けたいです」
【死のゾーンから目指す甲子園】
昴学園の躍進に、地域は大いに盛り上がっている。大台町には地域住民による後援組織「昴学園野球部を応援する会」が立ち上がった。春の東海大会は観光バスを1台貸し切って、地域の応援団が駆けつけた。
2 / 3


