検索

【高校野球】高川学園躍進のワケ 全面人工芝、LED照明、ウエイトルーム...プロ顔負けの設備の全貌 (2ページ目)

  • 内田勝治●文 text by Uchida Katsuharu

【2019年から部署制度を導入】

 人間形成において重要な期間である高校3年間を野球だけで終わらせない取り組みも行なっている。全国的に強豪で知られるサッカー部を参考に、2019年から「部署制度」を導入。農業部、企画部、食事部、用具・グラウンド部、寮統括部、集計管理部、組織管理部、おもてなし部、地域・学校貢献部、分析強化部の10部署を設置し、選手それぞれに役割と責任を与える。

 今秋ドラフトで阪神から1位指名を受けた右の強打者・立石正広(創価大)は食事部の部長として補食やプロテインの管理などを行なっていた。導入当時の監督だった西岡大輔部長が経緯を説明する。

「サッカー部の部署に少しアレンジを加える形で導入しました。食事部に関しては、部員は毎日3食必ず行なうことなので、ブレずにやってくれる子でないと任せられません。なかには、今日ご飯はいいや、という子もいます。指導者が1から10まで見張る部分ではありません。立石は部長として、きちんと責任感を持ってやってくれたと思います」

 企画部は月に1回、小中学生を対象にスポーツスクールを開催。甲子園出場の効果もあり、9月には過去最多の35人が集まった。昨年末には山野太一投手(ヤクルト)、椋木蓮投手(オリックス)、そして立石ら名だたるOBが講師役を務めた野球教室に訪れた150人をしっかりと誘導し、スムーズな進行をアシストした。

 ほかにも農業部がジャガイモやキュウリなどを栽培。育てた農産物を地域・学校貢献部が地元住民に配ったり、駅周辺の掃除なども行なう。来客の際にはおもてなし部が対応するなど、ユニークな部署を通して支えてくれる地域に恩返しを図っている。

 松本監督は「僕は甲子園がすべてではないと思っています」と力説する。

「高校野球はプロではなく、教育の現場です。次のステップへと進んだ時、そして野球を終えた時に何か残るものがひとつでもあればいいなと思っています。それが高校野球、そしてスポーツをやる理由ではないでしょうか」

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る