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【高校野球】昌平の監督が選手に伝える情報の正しい受け取り方 2年連続で甲子園初出場まであと1勝  (3ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文text by Shiratori Junichi

――今の時代は、上達するための情報がより手に入りやすくなったように感じます。

「私たちの高校時代は、正解がわからず、少ない情報のなかから正しいものを必死に探していくような状況でしたが、現在は至るところに溢れている情報のなかから、何を選び、何を信じていくかが求められるようになりました。情報科の教員としても『どの情報にも、発信者の何らかの意図が含まれていることを頭に入れて、それらと向き合うように』と生徒に伝えています。

 野球においても、正しい情報の受け取り方を養っていかないと、技術もなかなか伸びていかない。そんな現実はありつつも、『経験や失敗の少ない高校生のうちは、すべての情報を正しく判断することも難しいだろうな』と思う場面もありますね。誰にとっても、つらいことを地道に続けることは大変ですし、『できることならやりたくない』と思っている。継続することを多くの人ができずに伸び悩んでいます。

 発信者はその人たちのニーズに対応するかのように、YouTubeやSNSで発信をして注目を集めています。『これさえやれば、あなたも!』といった情報に飛びつきたくなる気持ちもわからなくないですが、そんな魔法のようなものは基本的にないと思っています。仮に、すぐにできるようになったとしても、そういったものは失うのも早い。いつの時代も、技術において大切なことの本質は変わっていません。その普遍的な部分を伝えられるように、日々生徒たちと向き合うようにしています」

――昨夏に行なわれたインターハイで、昌平高校のサッカー部は優勝を勝ち取りました。夏の予選で2年連続準優勝と、甲子園まであと一歩に迫っている野球部への期待も大きいのではないでしょうか。

「私が昌平高校の生徒だった頃、サッカー部を強豪に育て上げた藤島崇之さんがエネルギッシュに指導されている姿を見て、違う競技でしたが当時から尊敬の念を抱いていました。ありがたいことに今では上司と部下という立場ですので、ミーティングでの声がけや試合に対する向かい方など、多くのことを参考にさせていただいています。

 野球部は、残念ながら2年連続で県大会準優勝に終わってしまいましたが、それでも去年から前進しているという手応えは感じています。今年負けてわかった失敗を生かしていきたい、という思いで日々の指導にあたっています。

 ただ、私には来年の夏がありますけど、今年の高校3年生にはそれがない。小さい頃から甲子園の土を踏むことを夢見て頑張ってきて、昌平高校を選んでくれたのに、あとわずかなところで出場させてあげられなかった。そこに関しては申し訳ない気持ちが消えることはありませんし、彼らに悔しい思いをさせてしまったからこそ、次の生徒たちにはそんな思いはさせたくない」

(後編:昌平は敗戦から学び強豪になった 指揮官の目標の日本一は「必ず実現できる」>>)

【プロフィール】

岩﨑優一(いわさき・ゆういち)

1992年生まれ。昌平高校から獨協大に進み、社会人野球の三菱重工名古屋(2020年限りで統合)でプレー。2018年の日本選手権で優勝を経験した。引退後、母校のコーチを務めたのち、2023年秋に監督に就任した。

<取材協力/秋山高志>

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