【高校野球】昌平の監督が選手に伝える情報の正しい受け取り方 2年連続で甲子園初出場まであと1勝 (2ページ目)
――岩崎監督はかつて三菱重工名古屋時代、2018年の日本選手権で優勝を手にしました。トーナメント形式の大会を制した経験が、同じく負けたら終わりの高校野球の指導に生かされている部分はあるのでしょうか?
「確かに、どちらも負けたら終わりの戦いですし、打者でいえば限られた打席のなかで結果を出さなければいけなかったので、高校野球に通じる部分はあると思います。社会人でプレーしていた頃の私は、『どのように結果を残すか』を突き詰めながら練習していました。
打撃でいえば、選手たちには具体的な指導として『とにかくファーストストライクからいいスイングができるように』と伝えて、試合に送り出しています。結果は空振りでもいいんです。そのいいスイングが次の打席につながり、試合終盤の相手が絶対に失敗できない大切な場面などで活きてきます。待ち球を絞れるようになるんです。
しかし、初球のストライクを簡単に見逃してしまうと、私の感覚だと残り1回しか自分のスイングができない。追い込まれてから自分のスイングをすることは難しく、結果を出すのが困難になります。言葉では簡単ですが、高校生のうちはチームの主軸だった櫻井(ユウヤ)ですら苦戦するくらいに難しいことです。自分自身、選手時代にどこまでしっかりできていたかはわかりませんが、ボールの待ち方や投手との駆け引きについては口を酸っぱくして伝えています」
【生徒たちに伝える「情報」との向き合い方】
――練習場に、さまざまな図が貼られているのが印象に残りました。
「現役時代の私もそうでしたけど、指導者が『ああしろ、こうしろ』と言っても、話を聞いているようで、実際には本質まではあまり届いていなかったりする。私も気づくのが遅かった人間なので、お世話になった方々の言葉が今この立場になって身に染みることが多いです。
練習場に貼ってある図や言葉 photo by Shiratori Junichiこの記事に関連する写真を見る
それでも『今、部員たちに思いが伝わってほしい』と思っているので、資料を作って、習慣的に身体に染み込んでいくような環境を整えているんです。高校時代の3年間は、長いようですぐに過ぎてしまうので、時間をかけることでしか伝わらない領域をいかに短期間で伝えていくか。伝えすぎても学びの機会を奪ってしまいますが、そのジレンマを感じながら過ごしています」
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