藤浪晋太郎が振り返る大谷翔平との対戦、春夏連覇、そして大阪桐蔭での3年間 「一番の財産は、西谷浩一に出会えたこと」 (2ページ目)
結果、5回終了時点で大谷の球数は85球。そして思い描いたプランどおり、大阪桐蔭が6回に3点を奪い逆転。7回にも4番・田端良基の2ランでリードを広げた。結局、大谷は9回途中173球、9失点でマウンドを降りた。
対して、5回以降3安打と尻上がりに調子を上げてきた藤浪は、9回143球を投げきり、12奪三振、2失点で大一番を制した。
「花巻東の勝てたのは、これまで『大事なところで勝てない』と言われていたチームにとっても、自分にとっても大きな自信になりました」
【勝ちにこだわり選抜制覇】
2回戦の九州学院(熊本)戦は、左腕・大塚尚仁(元楽天)に苦戦したが5対3で勝利。名勝負となった準々決勝の浦和学院(埼玉)戦は、1点ビハインドの9回一死走者なしからの逆転勝ち。準決勝では、"機動破壊"で話題になっていた健大高崎(群馬)を8回に振り切り3対1。そして決勝は光星学院(青森/現・八戸学院光星)を7対3で下し、一気に春の頂点へと駆け上がった。
「とにかく大会中は勝てればいい、ほんとそれだけでした。だから大谷と対戦してどうかとか、三振を何個取ったとか、球速がどうだったかとか言われても、自分のことはどうでも良かった。余計な色気は、最後まで1ミリもなかったです。それだけ勝ちを欲していたんですね」
勝てる投手であることを証明した藤浪だったが、一瞬の喜びのあとに浮かんできたのは、満たされない思いだった。
「決勝戦も10安打以上、自分的にはバカスカ打たれたイメージで、大会を通して優勝はできたけど、自分が抑えたのではなく、野手に勝たせてもらったなと。ストレートはもっと強くしないといけないし、変化球もフォームもまだまだ。このままじゃ夏は勝てないと、春が終わった瞬間に頭が切り替わりました」
ここから「まだまだ」「もっともっと」が、藤浪の口癖となっていった。
【甲子園で覚醒し圧巻の投球】
選抜優勝のあと、チームは春の大阪大会、近畿大会をほぼ藤浪晋太郎抜きで制覇。春夏連覇へ向け、順調に進んでいったかに思えたが、実はそうではなかった。6月の追い込み練習が終わったあと、藤浪が股関節を痛めたのだ。
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