藤浪晋太郎が振り返る大谷翔平との対戦、春夏連覇、そして大阪桐蔭での3年間 「一番の財産は、西谷浩一に出会えたこと」 (3ページ目)
復帰後に行なわれた紅白戦では、初回6失点を含む3回8失点の大乱調。夏の大会まで最後の練習試合となった横浜隼人戦に勝利こそしたが、8失点完投。練習試合に負けただけでニュースになってしまう今なら、夏前のエースの大乱調はなかなかの騒ぎになっていただろう。
「たしかに、よく打たれるなとは思っていました。でも、原因はわからなかったですけど、まだまだ力が足りないととらえていたので、焦ったという記憶はないです」
ただ、チームメイトは違った。夏の大会直前、捕手の森友哉(オリックス)が監督の西谷浩一と会話をするなかで「澤田(圭佑/ロッテ)のほうがいいと思います」と、ストレートに進言したという。これに対して藤浪は、「澤田のほうがいいんじゃないかという見方は、あの頃を思えば自然だったでしょうね」と振り返る。
そんななかで迎えた大阪大会は、10対1から猛追され、澤田の助けを借りてしのいだ履正社との決勝を含め、藤浪の状態には波があった。
大阪大会の藤浪の成績は、4試合(30回1/3)を投げ被安打19、四死球18、奪三振43、失点10。5試合(24回2/3)を投げ被安打12、無四球、奪三振23、失点2という澤田の安定感抜群のピッチングで大阪大会を制したと言っても過言ではなかったが、甲子園になると一転、藤浪が覚醒した。
特に圧巻は、準々決勝からの3試合。まず、前年秋の近畿大会で打ち込まれた天理(奈良)を1失点完投。つづく準決勝も、6月の招待試合で敗れた明徳義塾(高知)を被安打2、四死球3、奪三振8での完封。ところが試合後のインタビューで藤浪の話を聞いていると、自己採点は「65点」。これには少々驚き、少し離れたところで記者に囲まれていた西谷に伝えると、「藤浪らしいな」という表情になり、こう言った。
「そう言うなら、明日はもっといい投球をしてくれるでしょう」
そして事実、春の再戦となった光星学院との決勝は、被安打2、四球2、奪三振14という完璧な内容で2試合連続完封。春はとらえられていたストレートもことごとく押し込み、普段は辛口の部長・有友茂史から「今でも『あの時のおまえは神がかっていた』と言われます」と、藤浪の顔がほころぶほどの投球で夏を締めくくった。
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