創部3年でセンバツ甲子園へ! 沖縄の新鋭校・エナジックスポーツ高等学院ってどんな学校?
群雄割拠〜沖縄高校野球の現在地(1)
話題の新鋭校・エナジックスポーツ高等学院(前編)
2024年夏、沖縄の高校野球は全国から関心を集めた。ベスト4にエナジックスポーツ、KBC、日本ウェルネス沖縄というカタカナ、アルファベット表記の高校が3つも入ったからだ。大会を制したのは、古豪・興南だったが、沖縄の高校野球界に新たな風が吹いているのは間違いない。はたして今、沖縄の高校野球界に何が起きているのだろうか。
かつて浦添商、美里工の監督として甲子園出場経験のあるエナジックスポーツ・神谷嘉宗監督 photo by Nakajima Daisukeこの記事に関連する写真を見る
【廃校になった小学校の跡地に開校】
沖縄の那覇から路線バスで普天間や嘉手納の飛行場、キャンプ・ハンセンやキャンプ・シュワブという米軍基地を通り過ぎること2時間強、さらにタクシーに乗り換えて約15分すると、ようやく目的の場所に到着した。
エナジックスポーツ高等学院。創部3年目の2024年秋の九州大会で準優勝し、今年のセンバツ初出場を決めた新鋭校だ。
「就任した時、『3年以内に甲子園に行く』と自分に発破をかけました」
69歳の神谷嘉宗監督は、自身の偉業に笑みをこぼした。全国の舞台にあと一歩届かなかった頃には"悲運の闘将"と呼ばれ、その後、浦添商や美里工という沖縄の公立校を甲子園へと導いた。
昨年秋のドラフト会議では捕手の龍山暖が西武から6位で指名され、同校初のプロ野球選手が誕生。直後の九州大会で準優勝し、初のセンバツ出場を果たした。
エナジックスポーツとは、どんな高校なのか。通信制として開校、創部3年での躍進、そして沖縄の名将が率いることもあり、ネット上には各種記事があふれた。
「1年目は大変でした。廃校になって10年以上も経っていたボロボロの学校で、グラウンドも荒れ放題でボコボコだから真っすぐ歩けない。地元の子はひとりしか入らなかったんです」
じつは開校1年目の2021年、エナジックスポーツは予定どおりにスタートできなかった。生徒が集まらなかったからだ。神谷監督が続ける。
「地元の子は、見に来ればわかりますからね。本当に廃屋みたいな感じだったから、『ここに学校、本当にできるの?』っていう感じでした」
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。