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夏の全国制覇で高校卒業後の進路を変更 京都国際・西村一毅は公務員志望から野球を続けることを決意した (3ページ目)

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi

 夏の甲子園で66キロだった体重は今もほとんど変わっておらず、現在は67キロ。食事の回数を増やすなど努力は続けており、来年の春には75キロまで持っていきたいと目標を掲げ、球質にもこだわりを持ちたいと語る。

「ストレートの球速を伸ばすことも大事ですが、球速以上に速さを感じさせられるようなボールを投げられるようになりたいです。あとは、スライダーをチェンジアップのように使えるようにしないといけないです。小さい曲がりのカットボールも練習しているので、春までに武器にできるようにしたいです」

【理想のエース像とは?】

 春の府大会、近畿大会、夏の府大会、甲子園と試合で結果を残すたびに、西村は今後の目標について何度も尋ねられてきた。そのたびに「公務員になりたいです」と平然とした表情で返してきた。

「野球に対しては無欲で何も考えていないところがある」と小牧監督は西村をチクッと"つつく"ことも多かったが、10月に入り西村は高校卒業後も野球を続けることを決意した。プロか大学進学かについては、「現時点ではまだまだ考えられないです」と話すに留めたが、この冬の成長次第でプロは"夢"ではなくなるだろう。

 理想のエース像は「誰からも信頼される、仲間がミスをしてもカバーできるピッチャー」だという。チームの柱としてだけでなく、高校野球界において西村は注目される存在である。そんな来年に向け、本人はこう意気込んだ。

「まずは全員で甲子園に優勝旗を還しに行って、夏の甲子園連覇という目標に全員で向かっていきたいです。そのために、この冬は鍛えていきます」。

 昨年の冬はセンバツを見越して、体づくりと同時進行で実戦練習にも時間を割いたが、今年は夏に向けて徹底した基礎練習に励んでいる。

「もともと今年は、ピッチャーはすごく走らされることになると聞いているので......。正直、走るのは好きじゃないけど、苦しい練習を乗り越えないと結果はついてこないので、これをすれば成長できると自分に言い聞かせて頑張っていこうと思います」

 日の当たらない場所でもがき、歯を食いしばる冬。その先に待つ未来は──西村が再びマウンド上で周囲をアッと言わせる時は来るのだろうか。その時に向けた戦いは、もうすでに始まっている。

著者プロフィール

  • 沢井 史

    沢井 史 (さわい・ふみ)

    大阪市出身。関西のアマチュア野球を中心に取材活動を続けるスポーツライター。『ベースボールマガジン』『報知高校野球』などの雑誌や、『スポーツナビ』などのweb媒体にも寄稿。2022年7月には初の単著『絶対王者に挑む大阪の監督たち』(竹書房)を出版。共著としても8冊の書籍に寄稿している。

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