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東海大相模・原俊介監督が語る指導論 「プロの技術を高校生に伝えるのは難しい」 (3ページ目)

  • 飯尾哲司●文 text by Iio Tetsuji

── コツやノウハウは教えられるのでは?

 主観的で言語化することができない知識のことを「暗黙知(あんもくち)」と呼びます。いわゆるコツや勘、ノウハウです。経験的知識とも言い換えられ、これは他者に伝播されないと言われています。だから技術であれば、望ましい結果になるように導いてあげるという感覚のほうが近いですかね。

── 実際に経験させないと、技術は身につかないということですね。

 ただ、これがまた面白いことに、試合中にテクニックのことを考えると体が動かなくなるんですよ。だから自主トレや基本練習の時に、意識的にテクニックを追究するのです。

── 練習の時に、技術をしっかり教え込んでいくと。

 練習でも、実戦形式の練習とそうじゃない練習があります。たとえば走者をつけてやるノックは、捕り方、投げ方うんぬんではなく、どういうふうに相手をアウトにするかがメインです。うまくやることが目的ではなく、相手を封じることが最優先です。逆に走者からすれば、いかに次の塁を目指して、ホームに生還するか。だから、守備側と走者側がもっと戦い合いなさいと、いつも言っています。その後に生徒たちだけで集めて話をさせるのは、自分たち発信で考えさせるためです。そうしないと、試合を運営できませんから。

── 逆に試合の時は、どういうことを意識させるのですか。

 いざ試合になれば、どう相手に立ち向かうか。テクニックのことなどは、もう二の次です。どれだけ無意識レベルで体が動くかどうかです。

【原俊介監督が目指す野球とは?】

── 最後に「原俊介流」の野球とは?

 「つながる野球」です。チームとして機能する野球ですね。単純な話、外野手が守備位置を後ろにして守っていれば、打たれる打球が深い外野フライでもいいわけです。これが外野手の前に落とされたり、内野手の間を抜かれたりする打球を打たれたりすると"機能的"ではなくなってしまいます。ということは、投手が野手の守備陣形を把握して投げれば、より機能的になってきます。つまり、投手が「いい球を投げたい」「速い球を投げたい」ということに固執すると、結果的に周りが見えなくなり、チームとして機能しなくなるわけです。

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