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2025年のドラフト戦線の主役となるか 東洋大・島田舜也が目指す究極の感覚とは? (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 6月の合宿で打ち込まれたリベンジという思いもあったのではないか。そう推測して登板後の島田に声をかけると、意外な反応が返ってきた。

「いやぁ、シンプルに楽しかったです。いつもどおり投げられました」

 いつもどおり──つまり周到な準備を積んで、「ゼロの力」で投げられたということだろう。「リベンジ」などという思考が入り込めば、島田の「いつもどおり」から離れてしまう。

 そんな島田も、合宿中にややムキになった瞬間があったという。それは堀越啓太(東北福祉大3年)とパートナーを組んだキャッチボールだった。

「向こうがエグいボールを投げてくるんで、こっちも負けないように少し力が入ってしまいました」

 島田はそう言って笑ったが、これはリップサービスなのかもしれない。実際に両者のキャッチボールを見た印象としては、「剛の堀越、柔の島田」。堀越が勢いよく右腕を叩きつけて伸びる球を投げるなら、島田は力感なく右腕を振りながら重力に逆らうような球を投げていた。いずれにしても、タイプの異なる本格派ふたりの成長が来年の大学日本代表、そしてドラフト戦線の行方を大きく左右するだろう。

 来年にはどんな存在になっていたいか。そう尋ねると、島田は少し考えてからこう答えた。

「島田は絶対にドラフト1位だと言われる選手になりたいですね。今年の中村さんとか、金丸さん(夢斗/関西大→中日1位)や宗山さん(塁/明治大→楽天1位)みたいな存在に。これまで学生野球でいい思いをしていないので、大学はいい思いをして終わりたいです」

 全国大会の出場実績はなく、島田に言わせると「負けてきた野球人生」。だが、島田が行き着いた「ゼロの力で投げる150キロ」は、その人生を劇的に変えるはずだ。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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