神奈川の強豪校が恐れる「公立の星」 菅高校・岩瀬将にメジャースカウトも興味 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 昨年秋、県外の強豪校相手に140キロ台にパワーアップした速球を武器に14奪三振。「公立の星」的な評判が広がったのは、その頃からだ。

「マイペースなヤツですからね......そういうことを励みにしたり、喜びにしているようですが、注目されるプレッシャーを重荷にするわけでもなく、じわじわと成長している感じですね」

 淡々と語る平林監督の手元にいるからこその"ほふく前進"のような進化ぶりなのかもしれない。そのほうがいいと思った。時間をかけて、少しずつよくなればいい。

 いろいろ聞いてみると、学校のグラウンドには本格的なブルペンはなく、バッターボックスも書かずにピッチング練習をしているという。

 それでも試験明けの、しかも強豪校相手に、あの粘っこい、うなりを上げるストレートを1イニング3、4球投げるのだから、正真正銘の「未完の大器」である。

 つい先日、メジャーのスカウトもグラウンドを訪れたという。今のスカウトは真面目な方な方が多い。ちょっと話題になれば、すぐ見に来てくれる。だからといって、「ならばメジャーで!」とまさかそこまで幼くはないだろうが、私は「未完の大器」こそ、アマチュアでもうひと勉強して、半完成品くらいになってからドラフト指名されたら......と思う。

 未完の大器が自分の器の大きさに気がついて、本気になったときの爆発力は、これまで何人も見てきた。岩瀬が、その列に加わることができるだけの素質があることは保証する。素質開花の第一歩、その最初のステップになる夏がまもなく始まる。

プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。

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