神奈川の強豪校が恐れる「公立の星」 菅高校・岩瀬将にメジャースカウトも興味 (2ページ目)
変化球と言われたら、投手は曲げなきゃいけないという思いに駆られてしまう。曲げようと思うと、どうしても腕の角度が変わったり、腕の振りが緩んだり、フォームが変化してしまって打者に悟られることになる。
強力打線相手に6回まで1点に抑えて、7回はさすがにへばったのか、4連打を浴びて4失点。
変化球とは、握りのちょっと違うストレート──そんな話を試合が終わったあと、岩瀬とつらつらしていたときのことだ。「握りのちょっと違うストレートかぁ、なるほど......」とつぶやいて、変化球の握りをして腕を振った。
「ハイッ!」と返事だけ立派な球児が多いなかで、すぐに実践し、理解しようとしていた。その姿を見たとき、頼もしい選手だなと思った。
【県外の強豪校相手に14奪三振】
「以前は欲がない子だったんです」と、平林明徳監督がじれったそうに話しておられたが、なかなか手応えのある球児ではないか。
完投したあとだけに、もっと面倒臭さそうに出てくるのかと思ったら、着替えをすませるとスッキリした顔で、目がイキイキとしていて驚いた。ひとつのきっかけで変身も十分にありそうだ。
「試験明けで、練習が十分じゃなかったのを考えたら、よく投げたほうだと思います」
平林監督の言葉に驚いた。そういうコンディションのときのボールのうなりじゃなかった。搭載エンジンの性能は間違いなく一級品だ。
「ちょっとシュート回転して、右バッターの内角を突くストレートが得意なんです。あとは左バッターの外に決まるボールですね。それが自分のベストボールなんで。そのボールだけは、今日もほとんど打たれていないと思います」
10本以上のヒットを打たれて、5点取られて敗れても、投手の"意地"を失っていない。自身を俯瞰して見られているし、自分の言葉で語れる。
なんとなく高校野球をしていた投手が、1年前に転任してきた監督に素質を見出された。平林監督が言う。
「子どもの頃、松商学園のエースで阪急にドラフト1位で指名された川村一明さんのキャッチボールを真後ろから見た時に『怖い』と感じた。岩瀬を初めて見た時、あの記憶が蘇りました」
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