ドラフト候補目白押し 優勝候補の筆頭だった富士大はなぜ全国大会出場を逃したのか? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 青森中央学院大との開幕戦を2対4で落とし、2節目となったノースアジア大戦では1回戦で2対3と敗戦。さらに3節目は国立大の岩手大を相手に、2回戦で2対3と逆転負けを喫した。

 北東北大学リーグは2戦先勝の「勝ち点制」ではなく、リーグ内の5チームと均等に2試合ずつ戦う「勝率制」である。ひとつの敗戦が大きな比重を占めるなかで、富士大は序盤から痛い黒星を3つも重ねてしまった。

 はた目には「取りこぼし」に見えるかもしれないが、リーグ内の当事者たちの受け止め方は違った。リーグ優勝した八戸学院大の新沼舘貴志(しんぬまだて・たかし)監督は言う。

「このリーグはどのチームもピッチャーがいいので、富士大さんであってもこうなる可能性はありました。取りこぼしでも何でもありません」

 金星を挙げた岩手大の菅龍太朗(かん・りゅうたろう)監督は控えめな笑顔で、「やりたい野球ができました」と振り返る。

「見に来てくださった観客全員、『岩大(がんだい)が負けるだろう』と思っていたはずです。継投がうまくハマって終盤まで粘れたので、勝つゲーム展開になりました。最後は富士大のミスにも助けられましたが、そこまで競ることができたのが大きかったと感じます」

 ちなみに岩手大は学生監督が指揮を執っており、菅監督は大学3年生。投手を兼任しながら、継投策を練っている。最速140キロを超える本格派右腕の中野祐太(4年・田名部)、変則派左腕の播磨颯和(はりま・そうわ/3年・久慈)ら実戦的な投手陣で強豪相手に立ち向かっている。

【選手主導の取り組みが仇に】

 一方で、富士大の仕上がりの悪さを指摘する声も聞こえてきた。開幕節では主力打者の佐々木が故障で欠場。エースの佐藤も本来の姿とはほど遠く、主軸の麦谷は「足を引きずっていた」という目撃情報もあった。

 5月4日、富士大の状態を確かめるために青森大との1回戦が行なわれる青森県営野球場を訪ねてみた。その時点で青森大は4勝2敗で2位、富士大は3勝3敗で3位。7連勝で首位を快走する八戸学院大を追っていた。

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