1日10時間猛勉強で横浜国立大へ進学して代表候補に 藤澤涼介が体現する大学野球の多様性 (3ページ目)
前述のとおり、藤澤は合宿でアピールに成功している。だが、それ以上に周りのレベルに衝撃を受けた。とくに藤澤が「圧倒された」と語るのが、渡部聖弥(大阪商業大3年)と西川史礁(青山学院大3年)のふたりである。
「レベルが違うと思いました。『これがジャパンのクリーンアップか......』と。意味がわからないくらい飛ばすし、意味がわからないくらい肩が強いし。彼らに対抗したいですけど、今のままじゃライバルとさえ思えません」
渡部も西川も藤澤と同じ右投右打の外野手であり、早くも来年のドラフト上位候補と目されている。自分自身を「感情的なところがない」と自己分析する藤澤だけに、渡部と西川の力量を嫌というほど実感したに違いない。
それでも、藤澤は意を決したようにこう続けるのだった。
「この冬は今回経験したものを基準にして、頑張りたいです」
なお、藤澤は大学受験時に青山学院大も一般受験し、合格している。もし藤澤が青山学院大に進んでいたら、西川や佐々木泰とともに強打線を形成していたのか、それとも神宮球場のスタンドでメガホンを叩いていたのか......。そんな話を振ると、藤澤は「そんな世界線もあったのかもしれませんね」と笑った。
だが、やはり横浜国立大に進学して学生主体の野球部で育まれたからこそ、今の藤澤があるのは間違いないだろう。野球部寮で生活し、高いレベルで揉まれるエリートもいれば、藤澤のようにひとり暮らしで自活してレベルアップに励む学生もいる。それが大学野球の多様性であり、面白さでもある。
2024年の春を迎える頃、藤澤涼介がどんな姿を見せてくれるのか。その動向を注視しているのは筆者だけではないはすだ。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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