2024年のドラフト候補が神宮大会で好投 注目の富士大・佐藤柳之介、最大の売りは?
【今秋の神宮大会で一躍注目】
佐藤柳之介(富士大3年)の投球フォームを見た時、「横浜高校のピッチャーみたい」という感想が頭に浮かんだ。
狭い幅のなかで体重移動し、力感がなくタイミングを計りづらいモーション。グラブハンドを斜め上に掲げる使い方まで成瀬善久(栃木ゴールデンブレーブス)や伊藤将司(阪神)といった横浜高校OBの左腕と重なる。宮城・東陵高出身の佐藤だが、彼らから影響を受けているのだろうか?
神宮大会初戦の上武大戦で3安打完封勝利を飾った富士大・佐藤柳之介 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る 本人に聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「SNSでもそう言われているみたいで、よく『載ってるよ』と連絡をもらうんです。でも、誰かを参考にしたことはなくて。自分のなかで『ボールに力を伝えやすい投げ方をしよう』と考えているうちに、勝手に今の形になっていった感じです」
佐藤の言葉を聞いて、「自力でこのフォームに行き着いたのか!」と驚かされた。成瀬や伊藤らの高校時代に基本を叩き込んだのは、名伯楽の小倉清一郎氏。投手の体の前後にネットを配置し、狭い幅のなかで投げるフォームを習得させている。捕手の方向へ真っすぐにベクトルを向けられるため力の伝達がスムーズになり、コントロールもしやすいとされている。
だが、佐藤はこんなメソッドを知らずとも、今の形に行き着いているのだ。
今秋、佐藤の名前は大きくクローズアップされた。明治神宮大会初戦の上武大戦で3安打完封勝利。関東屈指の強豪を相手に、まともにバッティングをさせなかった。切れ味抜群のストレートだけでなく、カーブ、スライダー、カットボール、ツーシーム、スプリットと手数も豊富。いささか気が早いが、来年のドラフト上位候補と言っていいだろう。
これほど実戦的で、「勝てる左腕」は貴重だ。そんな印象を本人に伝えると、佐藤はうなずいてこう答えた。
「高校時代の恩師の千葉(亮輔)監督からも『勝てる投手になりなさい』と言われてきました。自分のなかで一番の売りは勝てる投球ができることだと思っています」
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。