センバツのベストナインを記者3人が選出 マダックス達成の公立校の絶対エース、マスコミを利用した策士、軟投派の星... (3ページ目)
遅球で智辯和歌山打線を翻弄した英明の下村健太郎この記事に関連する写真を見る
菊地高弘氏(ライター)
投手/下村健太郎(英明)
捕手/堀柊那(報徳学園)
一塁手/仲田侑仁(沖縄尚学)
二塁手/林純司(報徳学園)
三塁手/谷本颯太(広陵)
遊撃手/山田脩也(仙台育英)
外野手/福井直睦(慶應義塾)
外野手/高森風我(作新学院)
外野手/徳弘太陽(山梨学院)
たとえ一瞬の輝きであっても、心から「うわぁ!」と声をあげた選手を選出させてもらった。
投手は想像以上のパフォーマンスを見せてくれた森岡大智(能代松陽)、升田早人(光)といった本格派の好素材も印象深い。それ以上に、軟投派サイド右腕・下村の強心臓ぶりに心を揺さぶられた。智辯和歌山の強打線を向こうに回して、満塁のピンチで97キロのスローボールを投げ込める。そんな度胸のある投手が甲子園で見られるとは思わなかった。投手の球速が上がっている現代高校野球にあって、下村の投球は「軟投派の星」になったのではないだろうか。
ワンプレーの輝きでいえば、福井も甲乙つけがたい。初戦屈指の名勝負となった慶應義塾対仙台育英戦。延長タイブレークで迎えた10回裏、一死満塁のピンチで仙台育英の熊谷禅がレフト前へヒット性の打球を放った。誰もが「サヨナラだ」と思った次の瞬間、レフトから福井が猛烈なバックホームを披露。三塁走者がホームベースに触れる前に送球が届き、まさかの「レフトゴロ」に。こんなプレーは生まれて初めて見た。結果的に慶應義塾は敗れ、福井はこの試合で5打数0安打に倒れている。それでも、後世まで語り継ぎたい一世一代のバックホームだった。
吸い込まれるようなプロテクター姿に見とれた堀。バットから爆発音が聞こえるホームランを放った仲田。下位打線とは思えない爽快なスイングで安打を連発した林。超高校級の中軸の前で着実に仕事をする谷本。試合前のシートノックから美しい身のこなしにうっとりした山田。昨秋に「こんな選手がいたのか」と驚かされ、甲子園でも力を発揮してくれた高森。攻守の非凡な馬力に「こんな選手、秋にいたか?」と思わされた徳弘。彼らはそれぞれの個性で、見る者のハートをわしづかみにしてくれた。
【タイトル】『離島熱球スタジアム』 鹿児島県立大島高校の奇跡
【著者名】菊地高弘
【発売日】2023年3月3日
【本体定価】1760円(税込)
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