専大松戸・平野大地は投手転向わずか2年で甲子園完封勝利 センバツ最速記録よりも目指すもの (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 常葉大菊川打線に7安打を許したものの、すべてシングルヒット。最速146キロに達したストレートと100キロ前後のカーブ、120キロ台のスライダーを駆使してフライの山を築いた。この日は7者連続を含む14個のフライアウトを重ね、常葉大菊川に最後までホームベースを踏ませなかった。

【野球人生初の完封が甲子園】

 試合後、平野は練習試合を含めて初めての完封勝利だと明かした。

「今まで自分が先発して完封できた試合がなかったので、甲子園でできて自信になりました」

 奪三振数は6。気になったのは、平野の投じたストレートが、打者の差し出したバットの下を通過して空振りするシーンがあったことだ。通常、ストレートのキレがいい投手ならば、打者のバットの上をボールが通過するだろう。

 結果的にフライアウトを稼げているため問題ないのだが、平野がさらに上の世界で活躍するためには「ストレートの質向上」が課題になるのかもしれない。

 平野に「自分のストレートの質について、どう考えていますか?」と聞くと、こんな答えが返ってきた。

「今まではスピードを出しにいこうと目いっぱい腕を振っていたんですけど、秋と比べると少しずつよくなっていると感じます。力感なく、リリースの瞬間だけ力を出して、回転のかかった真っすぐが投げられるようになってきました」

 この日の試合後の会見では、「球速」にまつわる質問が何度か飛んだ。過去のセンバツで計測された最高球速は藤浪晋太郎(現・アスレチックス)らの153キロ。平野にはその更新の期待がかかっている。

 だが、平野はそんな雰囲気を察知したのか、こんなコメントでかわしている。

「スピードよりも一番は勝つことなので。今日はコーナーに指にかかった強い球を投げることを意識して、何球かいい球もありました」

 平野の元捕手らしいクレバーさと、意識の高さを感じる受け答えだった。

 現時点での平野の最大の長所は、ストレートよりもむしろ変化球にあるのかもしれない。カーブとスライダーはカウント球としても勝負球としても使えて、この春からの新球・フォークで空振り三振を奪うシーンもあった。

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