高松商・浅野翔吾は小学生時から95本塁打。甲子園でのホームランに「球場の空気が変わった」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 2年秋には「飛ばし方は右も左も変わらないですから」と突如スイッチヒッターに転向。練習試合では左打席でも本塁打を放っている。

 その野性味あふれるプレースタイルはチームメイトから「人間じゃない」と評されるそうだ。

 浅野にとっては昨夏に続いて2度目となった甲子園。「1番・センター」で出場した浅野は、第1打席からどこかおかしかった。

 ファウルがことごとく高いフライになる。ボールを見送る姿も、タイミングが合っているように見えない。1打席目はカウント3ボール2ストライクから四球。2打席目は上空に高々と舞い上がる三塁ファウルフライだった。

 浅野以外にもポップフライを打ち上げる選手が多いことから、長尾監督は「叩くくらいのつもりでいかんと」と選手に指示している。

「(香川大会後は)ずっと本物のピッチャーではなく、バッティングピッチャーの球を打っていたので、スピンがかかるボールの下っつらを叩いていたんです。僕もバッティングピッチャーをやっていたんですけど、僕の球は垂れる(ホームベース付近で沈む)のでね」(長尾監督)

1番で起用する理由

 だが、浅野の場合はスイング軌道だけでなく、タイミングが合っていないように見えた。浅野本人はフォームの問題を感じとっていたという。

「体が少し突っ込んでいました。夏前から『体のなかで打つ』ことを意識していたので、修正して打ちました」

 そうして、第3打席は冒頭のような本塁打になった。さらに恐ろしいのは、高校生の右打者が甲子園球場の広い右中間スタンドに叩き込んだにもかかわらず、「少しこすっていた」と明かしたことだ。浅野にとっては会心の一打ではなかった。

 2本目の本塁打に関しては、「(前の打席で)真っすぐを打ったので変化球が多くなるかな」と予想どおりスライダーをとらえた。この打球の感触は「完璧でした」と浅野は振り返る。

 浅野の高校通算66号が飛び出した時点で高松商のリードは4点に広がった。佐久長聖の藤原弘介監督は、2本目の本塁打が痛かったと振り返る。

「あのツーランで選手の気持ちが切れて、試合が決まってしまったのかなと。あらためていいバッターだなと感じました」

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