野球人生最大の挫折を乗り越え、聖光学院・山浅龍之介が目指す世代ナンバーワン捕手の座 (3ページ目)

  • 田口元義●文・写真 text & photo by Taguchi Genki

 大会を重ねるごとにマスク越しの視野が広かっていったと、山浅は言う。

「内野との連携が密にとれるようになったこともあるんですけど、試合を重ねるごとにランナーの動きもよく見えるようになるというか。ちょっとした動きが癖のように見えれば、『このタイミングで投げればアウトにできるだろうな』とか。どんどん投げていくことで余裕が生まれるんだと思います」

 今年春のセンバツでは2試合で8打数2安打2打点と、バッティングでは強烈なパフォーマンスを披露できたわけではなかった。その山浅が9月に開催されるU−18ワールドカップの高校日本代表第1次候補選手に選ばれたのは、高い守備力が評価されたからだった。

 それは、プロも認めるところでもある。なかにはこう唸るスカウトもいた。

「あれだけの強肩で、スローイングも正確な高校生キャッチャーはなかなかいないですよ。セカンドに軽く投げているように見えますもんね。ゆとりを持って守備ができているってことなんでしょう」

夏の福島大会は打率.421を記録

 センバツが終わると、明らかに自分への警戒心が増していると感じるようになった。

「まだまだそんな選手じゃないんですけど、今まで以上にマークされるようになったのはうれしいですね。そこを打っていかないと成長はないと思うんで、頑張ります」

 春は警戒されるがゆえに打席で考えすぎてしまい、全身をうまく使ってバットは振れているが、インパクトが弱かったと言う。だから、打球にうまく力を伝えきれなかった。

 夏はその課題を意識するあまり、上体の力に頼るスイングが目立った。それまでは、バッティング練習で速いボールを中心に打ち込んできたが、バドミントンのシャトルを使ってしっかりとタイミングをとり、強いインパクトを心がけた。この修正が奏功し、夏の大会では打率.421、1本塁打、6打点と、5番バッターとしての役割を果たした。

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