東筑のテクニカルマニア・高崎陽登が目論む夢。「プロに行って、有名投手の動画を撮りまくりたい」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 試合後に高崎に確認すると、自慢の投球フォームに狂いが生じていたという。

「6月に左足首を挫いて、それをかばって投げるうちに左ヒジが痛くなって。痛みがなくなったあとも左足に体重がしっかり乗せられないまま体重移動するから体の開きが早くなり、ボールが抜けてシュートしてしまう。そんな負の連鎖に陥っていました」

高校卒業後は関東の大学へ

 4対8の4点ビハインドで迎えた8回裏。高崎は20日ぶりに夏のマウンドに上がった。エースとしてチームを鼓舞する投球が求められたはずだった。だが、腕が振れずに球速は120キロ台で、制球もままならない。このままズルズルいってしまうのか......と思わせたところで、高崎はプレートを外して間をとり、ロジンバッグに左手を伸ばした。高崎は内心、こんなことを考えていたという。

「しばらく投げていなくて緊張していたんですけど、間を空けて心を落ち着けて1球、1球しっかり投げようと」

 ひと息ついて投げたストレートは今夏最速の136キロを計測した。だが、その後も制球はバラつき、3四死球を与え二死満塁のピンチをつくる。最後は2ストライクと追い込んだが、甘く入ったスプリットをレフト前へ運ばれ、高崎はマウンドを降りた。

「変化球で打たれたら後悔するけ、なんで真っすぐを放らんかったんや!」

 ベンチに戻ると、高崎は青野浩彦監督から叱責を受けた。だが、高崎という投手は青野監督の思いを受け止めつつも、こんなことを考えてしまう投手なのだ。

「スプリットも自分的には自信のあるボールなので、そんな後悔はしないかなと思います」

 後悔があるとすれば、エースとして何も仕事ができなかったことだろう。高崎は目に涙をため、こう漏らした。

「最後の夏なのに、背番号らしいピッチングができず申し訳ないです。仲間たちは打たれたあともなぐさめてくれて。もう謝ることしかできないです」

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