名門校から勧誘が続々。怪童・内藤鵬はなぜ日本航空石川を選んだのか。「どの高校に行くにしても、入ってからの自分次第」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

日本航空石川に進んだワケ

 日本航空石川という高校は、不思議な場所にある。金沢市から自動車に乗って北へ約100キロ。能登半島の中部にある「のと里山空港」に隣接しているのだ。校門をくぐると駐車場にはヘリコプターが停まり、敷地内の格納庫には航空機が並ぶ。将来キャビンアテンダントや整備士など、航空関係の仕事に就くことを目指す生徒も多い。

 なぜ、日本航空石川に進もうと考えたのか。そう聞くと、内藤はこう答えた。

「早くから監督が見に来てくださって、将来の夢を聞かれた時に『プロ野球選手です』と答えたら、『絶対に夢をかなえさせてやる』と言っていただいて。航空はバッティングのチームですし、自分に合っていると思って進学しました」

 内藤が日本航空石川に進むことを知った知人は、一様に驚いた反応を見せた。「もっと有名な学校に行けばいいのに」という友人からの意見も耳にした。だが、そのたびに内藤はこう答えていたという。

「どの高校に行くにしても、入ってからの自分次第やから。期待しとって」

 内藤の打者として最大の特徴は、飛距離と確実性を兼ね備えているところだろう。中村監督は言う。

「今までの教え子でも、同じくらい遠くに飛ばすヤツはいました。でも、内藤ほど飛ばせて、打率も残せる選手は初めてです。頭の位置が動かず、反動で打つタイプではないので確実性につながっているのだと思います」

"鵬"の名前の由来は、中国の伝説的な鳥だという。鵬の両親は中国籍で、両親とは中国語でコミュニケーションをとる。といっても、中国には小学4年時に祖父母に会いに行った1回しかなく、どの都市かと聞いても「ニワトリとか牛とか動物がいっぱいいた、田舎だったことしか覚えていません」と判然としない。

 両親が中国人というルーツについて差別を受けた経験はないという。「いい友だちを持ちました」と内藤は笑うが、本人が持つ天性の愛嬌ともいうべきキャラクター性も大きな要因だったのではないか。中村監督は誇らしげに言う。

「人から好かれて、人が寄ってくるタイプです。チヤホヤされてもテングになることもなく、ブレません。先輩からはかわいがられて、同級生や後輩には気配りができる。誰よりも練習して、背中で引っ張るリーダーシップもあります」

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