大阪桐蔭・前田悠伍は入学後負けなしの救世主。「打たれるわけがない、という気持ちは持っている」 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Taguchi Yukihito

 さらに神宮大会では、初戦の敦賀気比(福井)戦で1点ビハインドの4回から救援し、6イニングを2安打、10奪三振、無失点の好投で勝利を呼び込むと、九州国際大付(福岡)戦は7回2失点完投(7回コールド)。広陵(広島)との決勝は乱打戦の最後を締め、大阪桐蔭を初の神宮制覇へと導いた。

「1年目であんなにいけるとは、正直思ってなかったです。小学校の時も、中学校の時も『1点取られたら負ける』というチームで投げていて、いつも苦しかったんですけど、高校では『こんなに打ってくれるのか』『こんなに捕ってくれるのか』と。そのおかげで、1年でも自分の力を出せたのかなと思います」

 屈託のない笑顔で振り返ると、『でも浮かれてないですよ』と言わんばかりの真面目な顔になって、こう言った。

「初めがよくても、ここから落ちていったら『なんや、こんなもんか』って思われるので、もっとレベルを上げていきます」

究極の負けず嫌い

 前田のすごさは、1年生にして勝てる投手としての要素を備えていることだ。

 しなやかな体重移動とヒジの先が走る無理、無駄のないフォームから放たれるストレートの球質は一級品で、今秋のドラフト候補である捕手の松尾汐恩も「手元での勢いが違います」と太鼓判を押す。秋の時点で最速145キロを記録したが、本人が「スピードよりもキレ、伸びにこだわっています」と話すように、回転数の高さが伝わってくる。

 さらに制球力も安定しており、抜けのいいチェンジアップにスライダー、昨年夏以降に覚えたというツーシームらの変化球も含め、どの球種でも簡単にストライクがとれる。常に投手有利のカウントに持ち込み、四球で崩れるという不安は皆無だ。

 ほかにも、先頭打者を容易に出さず、勝負どころでは一段階ギアを上げ、フィールディングも安定。投球テンポもよく、野手にリズムが生まれるため、援護と好守にも恵まれる。中学1年時にはカル・リプケン12歳以下世界少年野球の日本代表として世界一に輝くなど、大舞台の経験もある。

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