奥川恭伸、佐々木朗希の世代からまた好投手。元広陵の右腕が脅威の完成度でドラフト上位候補に急浮上
これほど「粗削り」からほど遠い20歳など、過去にいただろうか──。
試合中、何度もそう思ってしまった。大阪ガス(大阪市)の若きエース・河野佳(かわの・けい)のことだ。
都市対抗の伏木海陸運送戦で完封勝利を挙げた大阪ガス・河野佳この記事に関連する写真を見る 広島・広陵高から入社して2年目。8月23日に誕生日を迎え、20歳になったばかりの右腕である。
12月2日、都市対抗野球大会の初戦・伏木海陸運送戦に先発した河野は、9回を投げて二塁を踏ませない快投で4安打完封勝利を挙げた。
20歳らしい初々しさ、若々しさなどない。圧倒するようなボールがあるわけでもない。与えた四死球はゼロ。1球1球、丁寧にコースに投げ込む姿は、まるで社会人野球の厳しい世界で何年も戦っているような風格があった。
河野にはすでに立派な勲章もある。今夏に開催された社会人日本選手権で4試合に登板し、3勝をマークして優勝に貢献。19イニング無失点の成績で、大会MVPに輝いた。2022年のドラフト上位候補に挙がるのは間違いないだろう。
今年20歳ということは、佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、宮城大弥(オリックス)らプロ球界で続々と台頭している有望株と同世代になる。河野は彼らと立つステージこそ異なるが、先行するトップランナーの背中を追うような躍進ぶりだ。
河野は高校時代に春のセンバツに出場し、大会後には佐々木らとともにU−18代表候補の研修合宿に参加している。
高校時代の河野で思い出されるシーンがある。センバツ初戦の八戸学院光星戦。河野は八戸学院光星の3番打者・武岡龍世(現ヤクルト)に対して、勝負所で執拗にインコースを突いた。2対0とリードした8回表二死二、三塁のピンチでは、141キロのストレートで武岡のインコースを突き、力ないショートフライに打ち取っている。
試合後、武岡は「最後はインコースにくるとわかっていたんですけど、想像以上に河野くんのボールのキレがよくて、対応できませんでした」と語っている。大事な場面で危険なゾーンへと投げ切れる河野の勝負強さと、制球力の高さを物語るシーンだった。
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