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王者陥落のピンチを救った大阪桐蔭の1年生左腕。「負けたことがない」男・前田悠伍とは何者だ? (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

抜群の制球力を誇る大阪桐蔭の左腕・前田悠伍抜群の制球力を誇る大阪桐蔭の左腕・前田悠伍この記事に関連する写真を見る 前田は湖北ボーイズ(滋賀)に所属していた中学1年時に、カル・リプケン12歳以下世界少年野球大会に日本代表メンバーとして世界一を経験している。そしてチームの先輩である横川凱(巨人)に続き、大阪桐蔭への進学を決めた。

 現チームには、甲子園のマウンド経験がある本格派右腕の川原嗣貴、別所孝亮(ともに2年)に、大型左腕の川井泰志(2年)ら、力のある投手が揃う。そんななか、ポイントとなる試合を託されたのが前田だった。

 大阪大会では唯一接戦となった4回戦の東大阪柏原戦では、1点リードの8回、一打同点の場面で救援。ピンチを凌ぐと、9回は三者三振で締めくくり、1点差を守りきった。続く大商大堺戦は先発して1失点完投。準決勝の履正社戦は3点こそ失ったが、危なげない投球で完投。

 近畿大会でも塔南戦は2安打完封(7回コールド)、東洋大姫路戦はリリーフで3回を1安打。天理戦も7回1失点と、抜群の安定感でチームを勝利に導いた。

 この前田の何がすごいのか? 本人によると最速は145キロ。1年秋にしては十分すぎる球速だが、それでも驚くようなスピードボールを投げるわけではない。今の前田が持っている最大の武器は、数字やエピソードではなく勝てる投手としての資質である。

 まず本人がこだわり、磨いてきたというストレートのカギは脱力と力感。ヒジから先が走るフォームから、いかにも回転力を感じる球質のボールを投げる。好きな投手は、今永昇太(DeNA)と言うから納得だ。

 ほかにも、投球テンポのよさ、先頭打者を出さない、勝負どころで1本を許さない、得点したあとに失点しないなど、勝てる投手の基本を忠実に実践する。

 そうした投球を可能にしているのが、安定した制球力だ。いつでも簡単にストライクが取れる──これこそ前田の真骨頂である。気がつけば投手有利のカウントとなり、打者を追い詰めていく。

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