「むしろ何の問題があるのか」。女子野球の監督がトランスジェンダー公表で予想外だった周囲の反応 (3ページ目)
「正直なところ、僕の周囲にも性的マイノリティを理解できない人はいました。でも僕はその話も問題なく聞けちゃうんですよ。『ありえない。考えられない』と言われても、『そういう考えもあると思うよ』という感じで、その場にいることができます。
でも、今思うと苦しかったというか、気持ちを抑えていたところもあるでしょうね。僕の中には相手からは見えない壁があって、本当の自分ではなかったんだと思います」
勇気を持ってトランスジェンダーであることを公表した結果、碇のもとには一度も誹謗中傷やマイナスな反応は来ていない。当初抱いていた不安は杞憂に終わり、むしろ応援してくれる人ばかりだという。
「性別など関係なく、ひとりの人間として見てくれていたということだと思っていて、それがすごくうれしかったです。結局は、その人の人間性で変わるのかなと思います。もし僕が今までいい加減に生きていたら、マイナスな言葉が飛んできていたかもしれません。でも僕の場合は、『正直に打ち明けたほうが碇らしい』とも言ってもらえた。カミングアウトしてよかったと今は思っています」
現在、碇は体を男性に変えるため、ホルモン投与などの治療を行なっているが、戸籍上はまだ女性だ。現行の日本の法律で戸籍上の性別変更を行なうにはいくつかのハードルがあり、そのひとつに性適合手術をしなければならないという点がある。
手術自体は2018年に保険適用になったものの、ホルモン療法は対象外で、いまだに性転換における金銭的負担は大きい。精神的、肉体的にも強い負荷がかかることから、性別変更の要件から手術を外す法改正を行なう国が欧米では増えており、日本でもそれを求める動きが出てきている。
制度面の高度な議論はここでは省くとして、日本にも約8.9%いるという調査結果もある(参照:「電通ダイバーシティ・ラボ」2020年12月の調査)LGBTQ+の当事者と、我々はどう向き合っていけばいいのだろうか。
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