異例づくしの大学野球選手権。ドラフト戦線をにぎわす「左投手」と「右の強打者」に注目

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 大学野球日本一を決める祭典が、2年ぶりに開催される。第70回全日本大学野球選手権記念大会が6月7日から6日間にわたり、神宮球場と東京ドームで開かれるのだ。

 コロナ禍の影響はいまだに大きい。東海地区大学連盟の代表は、岐阜リーグで4位だった岐阜聖徳学園大。前代未聞の事態が起きた理由は、岐阜リーグで優勝した中部学院大をはじめ、2位・中京学院大、3位・朝日大の部内で新型コロナの陽性者が出たため。

 岐阜聖徳学園大が繰り上がりで東海地区選手権に出場し、静岡、三重の代表校に連勝で全国切符を勝ち取ってしまったのだ。他にも、創価大や東日本国際大など全国常連校が、新型コロナ感染者が出た影響でリーグ戦の出場辞退に追い込まれた。全27校の出場校を見渡すと、全体的にフレッシュな顔ぶれが目立っている。

 今大会に出場する有望選手は「左投手」と「右の強打者」がキーワードになりそうだ。

 左投手はドラフト候補の3投手がスカウト陣の注目を集めるだろう。3投手とも体格的には恵まれていないものの、ゲームメーク能力に長けた実戦派だ。

 隅田知一郎(ちひろ/西日本工業大)は昨年の時点で九州担当スカウトが「来年のドラフト上位候補になる」とマークしていた存在。一見、細身に見えるが、カミソリのように切れ味の鋭いストレートを武器にする。今永昇太(DeNA)を彷彿とさせる、サウスポーだ。

 今春は九州地区大学北部九州ブロック9連覇中だった日本文理大をプレーオフの末に破って、大学選手権出場を決めた。隅田は昨秋時点で「どこの大学よりも練習している自信はある。神宮球場に行きたいです」と語っていたが、念願がかなった形だ。

 7日の初戦では、日本一経験もある強豪・上武大と対戦する。強打線を相手に、どれだけ実力を発揮できるか。その投球内容はドラフト上位戦線に大きな影響を与えそうだ。

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