名門のエースがドラ1候補・小園健太に対抗心「自分に何が足りないのか考えた」 (2ページ目)

  • 沢井史●文・写真 text & photo by Sawai Fumi

 ただ中西のなかには、昨年秋の不甲斐ない投球が今でも脳裏から離れない。かつて県内では無双の強さを誇ってきた智弁和歌山が、昨年秋からライバルの市和歌山に3連敗。しかもセンバツ出場まで逃してしまったのだから、中西にとっては悔やんでも悔やみきれない結果となった。

「3連敗のうち、僕は2試合に投げているんです。とくに近畿大会はチームとして完封負け......流れを呼ぶピッチングができなかった。大会が終わってから、まず自分に何が足りないのかを考えました」

 おもに投手を指導する芝野恵介部長と何度も話し合い、メンタル面の弱さを指摘された。冬場の練習では、心を鬼にして苦手なランニングメニューを繰り返した。

「今までの自分の違う部分を見たいと思ったんです。苦手なことを毎日こなすことで、しんどくなった時に持ち堪えられるメンタルを身につけたかったんです」

 苦しい冬の練習の真っ只中に発売されたセンバツ関連の雑誌の表紙には、小園の姿があった。世代ナンバーワン右腕として、注目度は日に日に増していく。そんな状況に中西は「これが現実」と受け止めた。

「昨年秋は自分の未熟さのせいで負けたけど、小園くんに投げ勝たないと夏の甲子園はない。失点している場合ではないって、気持ちが高ぶることもありました」

 小園が快投を見せたセンバツの県岐阜商戦も録画し、ライバルのピッチングを目に焼きつけた。

「ピンチの時の制球力や力の出し入れがうまいのは相変わらずですね。さすがだと思いました」

偏差値72の福岡高校で最速149キロ。プロ注目の右腕は東大より狭き門を目指す>>

 ただ中西もひと冬越えて、手応えを感じ始めている。

「練習試合でピンチを背負う時がありますが、『あの時、あれだけ走ったんだから』と気持ちを奮い立たせて、ピンチを切り抜けたことがありました。それは秋にはなかった感覚でした」

 とはいえ、これまでは序盤に失点することが多かっただけに、今後はいかに立ち上がりをしっかり乗り切っていけるかが大きな課題になる。

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