「辞めるつもりだった」京都国際の監督が甲子園へ。教え魔から指導スタイルを変えた

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Sankei Visual

 さらに、欧州のサッカーチームなどが多く取り入れている脳と体の動きの連動性を重視する"ライフキネティックトレーニング"も導入するなど、積極的に新たなものを取り入れている。

 2013年のドラフト会議では、曽根海成が育成3位でソフトバンクから指名を受けた(現在は広島所属)。曽根のプロ入りはチームに大きな影響をもたらした。

「曽根は、中学時代はとてもじゃないけど、プロへ行けるような選手ではなかったんです。でも高校で努力して、プロのスカウトの方に見てもらえるまでになった。プロ4年目にフレッシュオールスターでMVPを獲りましたが、中学時代を知る関係者からすれば『あんな子がここまでできるんだ』となったと思うんです。そういうこともあって、中学のチームから信用してもらえるようになって、力のある子たちが徐々に来るようになったんです」

 一昨年のドラフトでは上野響平(日本ハム3位)、昨年のドラフトでは早真之介(ソフトバンク育成4位)、釣寿生(オリックス育成4位)と、立て続けにプロ野球界に人材を送り込むまでのチームになった。

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 また、昨年秋の近畿大会で勝ち進むにつれ話題になったのが、韓国語の校歌だ。校歌は京都韓国学園時代からのもので、校名が変わったタイミングで変更も検討されたが、継続された。

 現在でも韓国語の授業があり、選手たちは「母音をマスターすれば覚えられるが、そこまでが難しい」と口を揃える。校歌は覚えるのが大変だと話す選手がほとんどだが、慣れない言語をマスターしながら必死に白球を追いかけている。

「優等生とか100点満点は求めていません。でも、将来社会で必要とされる人間になりたいのなら、今は野球で頑張ることが大事。そのために普段から『なにが必要なのを考えなあかんよ』と言っています。野球をするのは人間なんですから、野球がうまくなりたいのなら人間としてよくならないと。人間として成長しないと、野球はうまくなりませんから」

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