プロ注目右腕・福島蓮がセンバツで屈辱のKO負けも「大化けする可能性」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 試合前のブルペンでは、低めに生きたストレートを次々に投げ込んでいた。だが、いざ試合が始まりマウンドに立つと、福島は投球練習の初球から3球連続で大きく高めに抜けるボール球を投げた。

 さらにプレーボールがかかった初球も、高めへと外れるボール球。ここで福島に変化が見られた。

 ノーワインドアップから、わずか1球でセットポジションに切り替えたのだ。

「いつもはノーワインドアップで投げるんですけど、自分としては何か違うと思ったので、ストライクの入りやすいセットポジションにしました」

 甲子園のマウンドの質感が想像以上に硬く、投球練習の段階からフィットしなかった。これまでもストライクが入らない時は自分の判断で、クイックで投げることもあったと福島は説明する。

 結果的に初回はランナーを出したものの、福島は0点に抑えている。

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 だが、この時点で福島の投球に怒りを覚えていた人物が三塁側アルプススタンドにいた。八戸西の投手コーチを務める中村渉(わたる)である。

 中村は2005~2007年まで日本ハムでプレーした、元プロ野球選手。畳職人ながらドラフト指名されたことで話題になった、変わり種のサウスポーである。現在は実家の中村畳工店で働きながら、八戸西の外部コーチを務めている。

 中村が福島に怒りを覚えた理由は、立ち上がりの2球目でセットポジションに切り替えたことだった。

「蓮は2ボール0ストライクになるとセットポジションに変えてクイックで投げることが多かったんです。でも、今日は1球目がボールになった時点ですぐに変えた。普段と違うことをした時点で、自分を信じられていない証拠です。蓮の『なんとかしたい』という思いはわかるし、人によっては理解されない考え方かもしれない。でも、僕には蓮が安全策に走ったように見えました。その時点で自分に負けていたと思うんです」

 2回に入ると、福島は具志川商の下位打線に4連打を浴びた。拙守やバックアップの不備もあり、4失点。この時点で八戸西は後手に回り、具志川商に完全にペースを握られてしまった。

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