中日ドラ1と互角の投げ合い。智弁学園のエースが進化して再び甲子園へ (2ページ目)

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 新チームとなり最上級生として初めての公式戦となった秋季奈良大会の郡山戦。初回、1点の援護をもらいマウンドに上がろうとしたが、雷雨に見舞われ中断。約1時間後に試合は再開されたが、コーナーを突くはずのボールが上ずり続けた。

「初戦の入りは大事だと思っていたんですけど、気持ちを入れすぎてしまいました。(中断で肩が)固まってしまったことも影響したのかもしれませんが、監督からは『気持ちだけは切らさないように』と言われていて、集中していたつもりなのですが......」

近畿で輝いている4人の大物投手たち>>

 先頭打者に四球を与えると、続けて連打を浴びた。相手のミスもあってなんとか0点に抑えたものの、その後も8回を除いては毎回ランナーを背負う苦しい投球が続いた。終わってみれば12安打を許し3失点。試合は5対3でなんとか勝利したが、「不甲斐ない投球だった」と、西村は反省の弁を口にした。

「中京大中京戦のピッチングはすごく自信になったんですけど、あの試合で満足したような気がします。自分の甘さが出てしまいました」

 かねてから課題だった四球の多さが目立ち、安定感を欠いた。近畿大会初戦の滋賀学園戦も、6回まで3安打2失点とまずまずのピッチングを見せていたが、7回に4四球を出すなど突如乱れ、一気に4点を奪われ逆転を許した。試合は9回に逆転サヨナラで勝利したが、県大会に続き初戦での不甲斐ないピッチングに、西村は肩を落とした。

 だが、小坂将商監督はエースの成長を感じ取っていた。

「今まではカウントが悪くなったら、『もう四球でいいや』って簡単にランナーを出していたんですけど、秋はそれが減っていました。マウンドで落ち着きが出てきたというか......。中京大中京との試合後から、意識が変わってきたように思います。全体練習が終わって、グラウンドで誰か走っているなって思ったら、西村だったということがよくあります。今までそんな姿は見たことがなかったですからね」

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