2021ドラフト戦線は始まっている。敵も「えぐい」と脱帽する右腕に注目

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 2020年のドラフト会議が終わったということは、2021年のドラフト戦線が本格的に始まったことを意味する。

 11月9日から4日間にわたり関東地区大学野球選手権大会、通称「横浜市長杯」が横浜スタジアムで開催され、桐蔭横浜大が優勝を飾った。全国大会常連チーム同士のガチンコ対決で、早くも来秋のドラフト戦線に浮上してきた選手がいる。

 開幕戦から強烈な存在感を放ったのが、共栄大の3年生エース・小向直樹だった。共栄大と東京新大学リーグで戦い、リーグの盟主として君臨する創価大の岸雅司監督は手放しで小向を称賛する。

「あの子はすばらしい。ウチもやられたけど、打てないもの。来年、プロでしょう。連投ではなく、休みをとって投げられたら打てません」

最速151キロを誇る共栄大の小向直樹最速151キロを誇る共栄大の小向直樹 今年から共栄大の主戦格になった小向は身長185センチ、体重75キロの長身痩躯な右腕である。最速151キロの快速球とチェンジアップなど多彩な変化球を扱い、今秋はリーグ戦で4勝を挙げ、横浜市長杯ではリリーフを含め3連投でチームをベスト4に導いた。試合後の報道陣との受け答えでは取材慣れしていないせいだろう。言葉に詰まる場面もあり、いかにも初々しさがあった。

 初めて小向の投球フォームを見た者は驚くに違いない。よく言えばダイナミック、悪く言えば故障が心配になるフォームである。右腕のバックスイングで大きな弧を描き、真上からボールを投げ下ろす。一般的には「アーム投げ」と呼ばれる投げ方で、肩・ヒジに負担がかかりやすいとされている。

 しかし、小向はこれまで肩・ヒジを痛めた経験がないという。小学4年で野球を始めた当初から投手を務め、「投げ方は今とほとんど変わりません」と言う。つまり、一般的には故障しやすい投げ方に見えても、小向にとっては最適な投げ方なのかもしれない。プロの世界を見渡しても、戸郷翔征(巨人)のようにアーム式の腕の振りでも大活躍を見せている投手もいる。

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