明大ドラ1候補は作新の4番→エース。大学2年時、仲間の声に「変わるなら今」

  • 永田遼太郎●文 text by Nagata Ryotaro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 10月11日、神宮球場。この日、明治大学のエース・入江大生は球速へのこだわりを捨てた。投球フォームを従来のノーワインドアップからセットポジションに変え、制球力と安定感を重視した。

 川上憲伸(元中日)、野村祐輔(広島)、伊勢大夢(DeNA)......と引き継がれてきた明大野球部のエース番号である「11」を背負う意味を自身に問いかけ、将来のことではなく、今やるべきことを最優先した結果だった。

最速153キロを誇る明治大のエース・入江大生最速153キロを誇る明治大のエース・入江大生 今秋の入江は、第1節の早稲田大戦で5回7安打6失点。翌週の立教大戦でも2本の本塁打を許すなど、3回までに3失点。この時点で防御率は6点台と「らしくない」投球が続いていた。入江が振り返る。

「ドラフト前で『結果を残さないといけない』という気持ちが強すぎて、本来のピッチングができていなかったんです」

 今年はコロナ禍の影響で全国大会、リーグ戦が中止、延期となった。4月開幕予定だった東京六大学野球の春のリーグ戦も8月に延期となり、さらに総当たり1回戦制の縮小開催となるなど、スカウトへのアピールする場が極端に限られた。そうした背景もあり、入江はいつも以上に結果にこだわった。

 だが、思うような投球ができない。そこで「何かを変えないと現状を打破することはできない」と考えた入江は、試合のない期間を利用して、自身の投球をあらためて見つめ直した。そこでひらめいたテーマが"脱力"だった。

 そして10月11日の法政大戦。1回表、1番・岡田悠希への初球、入江はセットポジションから139キロのスプリットで入った。

「相手打線は強力なので、初球からバンバン振ってくるだろうと思ったんです。そこで初球のストレートを打たれたら、その時点で相手に流れが向いてしまいますから」

 入江ははやる気持ちを抑えて、冷静に、ただ淡々と投げ続けた。終わってみれば9回127球を投げて7安打無失点。自己最多の13三振を奪う快投で、リーグ戦初完封勝利を飾った。

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