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レジェンドの弟が打撃の免許を皆伝。
普通の捕手が3年でドラフト候補へ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sportiva

 山本監督は、このドリルの狙いをこのように解説する。

「高校生のスイングを見ていると、スイングスピードのピークがボールに当たる瞬間ではなく、当たる先にくることが多いんです。『キャッチ』は『ここで終わる(ピークを持っていく)んだ』という意識づけをして、ボールをつかまえる感覚を養うんです」

「キャッチ」でボールをつかまえる感覚を養い、春を迎えると効果は目に見えて表れた。牧原は言う。

「最初はボールをとらえる感覚がわからなかったんですけど、冬が明けてから『こんなに軽くホームランになるんだ』という感覚が出てきたんです。次第に『ここでとらえたら飛ぶ』というインパクトゾーンと、『ここでとらえたらヒットになる』というヒットゾーンが見えるようになってきたんです」

 ほかにも、左投手が苦手という課題もあったが、山本監督の指導のもと「体を止めて腕で打つ」という技術を習得。理屈はわかっても実行できない選手が多いなか、牧原は高い理解力と豊富な練習量でみるみる上達していった。

「右手は力を抜いて引き戸を引く感じで、左腕は脇を締めて打つ。両腕のバランスが噛み合うようになりました」

 2年夏の神奈川大会は横浜スタジアムのレフトスタンドに放り込むなど、3本塁打をマーク。今夏の神奈川独自大会でも2本塁打を放った。高校通算本塁打は29本とドラフト候補としては多くはないものの、捕手として出場した日は練習試合のダブルヘッダー2試合目に起用しない山本監督の方針もあり、出場試合数が決して多くないという背景もあった。

 あるスカウトは牧原の打撃練習を見て、「この選手のバッティングには、『こうやってつくってきたんだ』という根拠がある」と評価したという。今では山本監督も「バッティングは免許皆伝です」と認めている。山本監督の目には近藤健介(日本ハム)の姿がだぶって見えるという。

 一方の守備は、高校生活で目指す領域まで詰めきれなかったそうだ。今夏の神奈川独自大会を含め、捕手としてはやや不完全燃焼に終わった。

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