一芸でプロ入りを目指す隠れた逸材たち。
大化けの夢が広がる6選手 (3ページ目)
並木は首都大学2部リーグの選手ながら、昨年12月に日本代表候補合宿に選出された。手動のストップウォッチで計測した50メートル走では、参加選手トップの5秒32を叩き出した。
奥野は今夏の甲子園交流試合で2盗塁をマークしただけでなく、浅い外野フライでタッチアップして生還するなど、実戦に強い走塁能力の高さを見せつけた。快足といえば五十幡亮汰(中央大)ばかりが注目を集めるが、五十幡は上位指名でなければ獲れない存在になった。上位で外野手を指名できない球団にとって、並木と奥野は触手を伸ばしたくなる選手に違いない。
5人目は捕手。評価するうえで重視されやすいのが肩の強さだ。ここにきて強肩捕手として存在感を増してきているのが榮枝裕貴(さかえだ・ゆうき/立命館大)である。
身長180センチ、体重81キロの体は、不思議とプロテクターを装着している時にもっと大きく見える。ただ馬力に頼ったスローイングではなく、握り換えが速く弾力のある腕の振りで、イニング間の二塁送球だけで相手にプレッシャーをかけられる。
昨年は大本拓海(現・ヤマハ)という主力捕手がいたため、正捕手としてマスクを被るのは今季が初めてとキャリアは浅い。それでも、捕手としての気配りやセンスも非凡なものがある。
今秋の関西大との優勝をかけた大事な一戦では、不調の投手を巧みにリード。「左バッターへのカットボール、スライダーはいいから、真っすぐを見せ球にしよう」と即座に配球を定める鋭敏な思考力を見せた。
捕手は大まかに分けると、相手打者の嫌がる球ばかりを要求するタイプと、投手のよさを引き出そうと腐心するタイプに大別される。榮枝は自身を「その両方」と自己診断する。
「相手がインコースを打てないと思ったら、ずっと内ばかりを突いて、いよいよ相手も狙ってくると思ったら逆に外にいって『内にこんのかい!』と思わせる。ピッチャーのよさを引き出すのも大事ですし、使い分けのバランスが大事だと思います」
もはや鉄砲肩だけが売りの選手ではない。捕手の素材としての魅力は、今年のドラフト候補のなかでもトップクラスだろう。
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