「急ピッチ投法」で大阪桐蔭も翻弄。
東海大相模のエースは異次元のテンポだ
「ウチのエースの山口(塁)もテンポが早いほうなんですけど、石田くんは山口よりもっと、噂に聞いていた以上に早くて......。1球きて、次の球に向けて構えたら、もう足を上げている、という感じでした」
秋季神奈川大会の準々決勝で対戦した横浜商の主砲・畠山翔は驚きを隠せないようだった。
秋の神奈川大会を制した東海大相模のエース・石田隼都 その日、東海大相模のエース左腕・石田隼都(はやと)は9回一死まで横浜商を無失点に抑えて、2番手の金城龍輝にマウンドを譲った。試合は6対0で東海大相模が快勝。特筆すべきは、試合時間が1時間34分と短かったこと。コールドゲームではなく9イニングを戦い、東海大相模は9安打、横浜商は7安打と両チームともランナーを多く出しているにもかかわらずだ。
横浜商の畠山が言うように、山口の投球テンポも早かったが、石田のそれは別次元だった。
ワインドアップから力感なく捕手に向かって腕を振ったと思ったら、後ずさりしながら捕手からの返球を受け取る。そのまま流れるように両腕を上げてワインドアップのモーションに入ると、捕手のサインを確認して、再び投げ込む。
「この試合の後に、何か大事な用事でも控えているのか?」と勘繰りたくなるような、慌ただしいテンポなのだ。
しかし、この石田の急ピッチ投法は今に始まったことではない。今夏の甲子園交流試合では、大阪桐蔭戦で先発。ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、観戦者にメモする暇も与えないピッチングは大阪桐蔭打線をも封じた。
最速142キロのキレのあるストレートに、スライダー、カーブを交え、右打者には決め球のチェンジアップでタイミングを外す。これらのボールを高速テンポで投げ込まれたら、打者は考える時間すら取れないだろう。
大阪桐蔭戦は5回終了時点でわずか52分しか試合時間が過ぎていなかった。2対1と東海大相模がリードした7回裏に、石田は打球を利き手の左手で止めにいき、その代償のような失策から同点に追いつかれて降板。チームは8回裏に勝ち越されて敗れるも、2年生左腕の好投は鮮烈な印象を残した。
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