「キャッチボールは必要?」。ドラフト候補が考えたいきなり全力投球の調整法 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 規定により、1年間はリーグ戦の出場が禁じられた。伊藤はこの期間が「もっともつらく、もっとも成長できた時間」と振り返る。

「試合に出られないこともあって、どういう体の使い方をするのがベストなのか、深く掘り下げて考えるようになりました」

 そして伊藤はひとつの疑問にたどりつく。

「肩慣らしのキャッチボールは必要なのか?」

 一般的に投手は短い距離から軽く腕を振って体を温め、肩をつくっていく。だが、伊藤はこの過程は自分には合わないと感じていたという。

「僕はゆっくり投げるとヒジを押し出してしまうクセがあって、肩慣らしのキャッチボールをすると、変なクセを体に覚えさせてしまう気がしたんです」

 そこで伊藤は「キャッチボールの1球目から100パーセントの力で投げたい」と考え、独自の調整法を編み出す。

 試合当日の朝、伊藤はまずウォーキング、ランニングで自分のコンディショニングや天候などプレー環境をチェックする。その後、静的ストレッチ、動的ストレッチで体をほぐし、サイドステップなどのウォーミングアップをする。

 ここから伊藤が特殊なのは、野球の投球動作を一つひとつ細かく分解した動きを、メディシンボールなどを使って確認していくのだ。

「僕のなかでは、ここでもうキャッチボールが始まっている感覚です。一つひとつの動作を確認して、おかしいと思う部分があればストレッチに戻ってやり方を変えたり。ここで40分くらいかけますね」

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