超絶守備の近江・土田龍空。甲子園に残した「忘れ物」はプロの舞台で取り戻す (6ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 この技術はとくに誰かに聞いたわけではなく、独自で磨いてきたことだという。

 独自の感性に理論に基づいた根拠が加わり、土田の守備は劇的に進化した。土田は「今まで勢い任せで空回りしていたのが、今では先に打球を読んで、捕球に入れるようになりました」と自信に満ちた口調で述べた。

 だが、土田にとってはリベンジとなる舞台、林が「活躍したら許したる」と言ってくれた舞台は、夏に入る前に失われた。5月20日、夏の甲子園中止が正式に発表されたのだ。

 その夜、土田は自身のTwitterアカウントで、このようにツイートしている。

<最後の夏中止になりました。
とても悔しいです。
でも落ち込んでる暇なんてありません。
さあ今です。皆んなで元気出して立ち上がりましょう!!>(本文ママ)

 近江の仲間たちに送るメッセージ、という以上に、全国の高校球児に送るエールのようにも読めた。そんな感想を伝えると、土田はこう答えた。

「僕も悔しいし、みんなも悔しいと思うんです。でも、僕は苦しい時こそ、元気を出して、笑顔でやりたいんです。みんなが元気になれば、自然と周りも笑顔になります。まだ人生が終わったわけじゃない。元気に笑顔で立ち上がって、もう一度楽しい野球をしよう。全国の高校球児にそう伝えたかったんです」

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