日大三・小倉監督の原点は「打倒・帝京」。
不遇を糧に歩んだ名将ロード
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高校野球・名将たちの履歴書
第3回 小倉全由(日大三)
2018年12月、東京都の高校生選抜チームがキューバに遠征した。戦績は1勝3敗1分。年齢制限も曖昧で、ナショナルチーム候補もいる相手に負け越したのは仕方ないとして、すごかったのは東京選抜チームの首脳陣だ。
監督は前田三夫(帝京)、コーチ陣は小倉全由(まさよし/日大三)、和泉実(早稲田実業)、市原勝人(二松学舎大附)。市原以外は全国制覇経験を持ち、その市原も二松学舎大附のエースとして1982年のセンバツで準優勝を果たすなど、とにかく豪華布陣だった。この時、誰よりも感慨にふけていたのは小倉だった。
「前田さんとあんなかたちでご一緒できるなんて......かつては思ってもいませんでした」
圧倒的攻撃力で2度の全国制覇を達成した日大三・小倉監督 小倉は前田の8歳下。駆け出しの監督だった関東一高時代は何度も煮え湯を飲まされ、しかも同郷という敬意もあり、小倉にとって前田は雲の上の存在だった。実際、顔を合わせてもあいさつ程度がせいぜいで、私的な話ができるようになったのは、50歳を過ぎてからだという。
小倉は1981年に関東一の監督となり、85年夏に同校を初めて甲子園へと導き8強入り。1987年春のセンバツでは準優勝に輝いた。そして1997年からは日大三を率いて、2001年夏、2011年夏に全国制覇を果たすなど、誰もが知る高校球界の"名将"となった。
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