全国実績ナシ→大学で衝撃デビュー。慶応大左腕が魅力UPでドラ1候補へ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 富士大戦では最終イニングに突如制球を乱し、連続四球で一死一、二塁のピンチを招いた。だが、ここからの投球は圧巻だった。高めの釣り球で2者連続三振。明らかにギアを上げ、抑えにかかったことがうかがえた。佐藤は「ピンチで思い切り投げるときはリリースが合う」ともコメントしている。

 大学3年間のリーグ通算勝利数は、1年秋の3勝から1つも積み上げられてはいない。だが、年間通して万全な状態をキープできれば、秋にはドラフト1位候補になるだけの素材だろう。それでも、佐藤に慢心はない。

「ウチのピッチャー陣は豊富なので、最上級生の自覚を持っていかないと下もついてこないですから」

 佐藤の同期には同じくドラフト上位候補の木澤尚文(慶應義塾高)、故障明けながら安定感はチーム随一の関根智輝(城東高)、速球派左腕の長谷部銀次(中京大中京高)。さらに3年生以下にも昨秋に東京六大学リーグベストナインを受賞した森田晃介(3年・慶應義塾高)や、増居翔太(2年・彦根東高)など他大学ならエース級の実力派がひしめいている。

 2019年から投手陣を指導する竹内大助助監督は、佐藤に対してこんな注文をつけている。

「技術よりもまず、立ち居振る舞いを求めています。マウンドで堂々と、かっこよくしていてほしい。去年よりピンチで持ち直せるようになってきたし、成長していると思います。私は1年秋の絶好調だった佐藤を目の当たりにはしていませんが、魅力を伸ばして次のステップに進んでもらいたいです」

 神宮球場のマウンドで佐藤が再び躍動する日は近い。そして東京六大学のファンは「1年秋の佐藤」ではなく、パワーアップした「4年春の佐藤」を目撃することになるだろう。

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