2019.11.05

なぜドラフト指名漏れ? 大学屈指の
快足野手はプロ入りをあきらめない

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

——こんなにいい選手が、なぜドラフト指名漏れなのだろう……

 2年前の秋。ドラフト会議直後に開催された横浜市長杯(関東地区大学野球選手権)で上武大のエース右腕を見て、そんなため息をつかずにはいられなかった。

 プロ志望届を提出しながら、どの球団からも指名を受けなかったその右腕は、力強く角度のあるストレートと、縦に鋭く曲がるカーブを武器にすばらしいパフォーマンスを見せた。

 バックネット裏には多数のNPBスカウトが見守っていたが、なかには「指名しておけばよかった」と、ほぞを噛む思いをしていたスカウトもいたかもしれない。まるで指名漏れの悔しさを晴らすかのような快投だった。

 その後、右腕は上武大の恩師・谷口英規監督の古巣でもある東芝に入社し、社会人野球でも活躍。そして2年後のプロ解禁年となる今年、西武からドラフト1位指名を受けた。それが社会人きっての即戦力右腕と評価される宮川哲である。

 ドラフト会議は、すばらしい選手から順番に指名を受けるわけではない。各球団の補強ポイントという「需要」にマッチした選手から名前を呼ばれていく。それゆえ、高い実力を秘めながらエアポケットにはまったように名前が呼ばれない選手が毎年出てくる。2年前の宮川がまさにそうだった。

大学3年時は24試合で26盗塁を記録した白鴎大の金子莉久 今年もドラフト会議直後に横浜スタジアムで開催された横浜市長杯を見ていて、再び「なぜこの選手が指名漏れなの?」と感じる選手がいた。それが白鴎大の外野手・金子莉久(りく)である。

 金子は大学屈指の快足として知られている。3年時には春秋リーグ合わせて24試合で26盗塁という驚異的なペースで走りまくった。ただ、金子本人は「3年の時はちょっとやりすぎました」と振り返る。

 その後、金子が出塁するたびに、リーグ内の投手から執拗に牽制球を投げられる徹底マークにあったのだ。今秋は「大事な場面だけ走るようにした」と、関甲新学生リーグ10試合で4盗塁にとどまった。