奥川恭伸が抜けても星稜は強い。
守より攻の強力打線で全国制覇を狙う

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki
  • photo by Yo Nobuyuki

 高く上がった打球がレフトポール際に伸びる、伸びる......入った。高校野球・秋季北信越大会決勝は、星稜と日本航空石川という石川県同士の対決となった。

 7-0と大きくリードした星稜は5回、一死満塁から4番で主将の内山壮真がホームランを放ち、リードをさらに広げた。これが高校通算27号となった内山は言う。

「フォアボールが3つ続いたあと、初球もボールだったので、真っすぐを狙っていました。ファウルにならなかったのは、左から右の風が押し戻してくれたおかげ。でも、まずまずの当たりだったと思います」

 星稜はこのあとも攻撃の手を緩めず、日本航空石川の4投手から4本のホームランを含む22安打、19得点。投げても先発した寺西成騎が6安打1失点と好投。19-1と圧勝し、4季連続優勝を決めた。

圧倒的な攻撃力で北信越大会を制した星稜ナイン圧倒的な攻撃力で北信越大会を制した星稜ナイン ドラフトで指名された奥川恭伸(ヤクルト1位)と山瀬慎之助(巨人5位)のバッテリーで、今年夏の甲子園で準優勝を果たすなど、星稜はもう絶対的な"北陸の雄"と言っていい。

 ただ、甲子園決勝が行なわれたのは8月22日のこと。新チームが迎える秋季石川大会の初戦は9月8日と、わずか20日ほどしかなく「とにかく、実戦的な練習をするしかありませんでした」と林和成監督は振り返る。しかも、林監督自身は「もともと新チームのつくり方はうまくない」と自覚している。どうしても、旧チームと比較してしまうのだそうだ。

 だが新チームには、内山をはじめ、知田爽汰、今井秀輔、荻原吟哉、寺西など、甲子園経験者が多くいる。新チーム結成から公式戦までの間にこなした練習試合は4と極端に少ないが、「試合慣れしているのがこのチームの長所」(林監督)が言うように、少ない時間のなかでもやりくりしながらチームをつくり上げた。

 旧チームでショートだった内山を捕手に、今井は外野からファーストにコンバートした。だから、「ディフェンスはある程度目をつぶり、打ち勝つチームに」と腹をくくることができた。

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