2019.09.13

26歳青年監督が名将の采配に学ぶ
「伝統校には本当の強さと凄みがある」

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 履正社(大阪)の初優勝で幕を閉じた令和最初の甲子園だが、平成の高校野球を代表する監督のひとり、馬淵史郎(明徳義塾/高知 )が歴代4位の通算51勝を挙げたことも話題になった。

 この夏、そんな偉大な名将に挑み、老獪さを嫌というほど味わったのが、甲子園初采配となった藤蔭(大分)の監督である竹下大雅だ。大会最年長監督となる63歳の馬淵に対して、竹下は大会最年少の26歳。両者は「37歳差対決」として注目を集めた。

監督歴わずか4カ月でチームを甲子園へ導いた藤蔭の竹下大雅監督 開幕前の監督対談で、まず馬淵が先制攻撃を仕掛けてきた。

馬淵「若いなぁ。結婚はしているの」

竹下「いいえ」

馬淵「あんまり早くに結婚せん方がええよ」

竹下「はぁ......

 戸惑う竹下に"口撃"は続く。

馬淵「結構(試合で)エンドランをかけとるね。若いから度胸がある。エンドランはリスクが大きいから、若い時らともく、オレはようせん。オレならバントや」

竹下「......(苦笑)」

 防戦一方の竹下はこの時、体中から汗が噴き出していたという。

 大分大会の藤蔭は、チーム打率.35116盗塁に加え、エンドランを多用する積極的な野球で、6試合中3試合がコールド勝ちと、高い得点力で勝ち上がった。当然、甲子園でもエンドランを絡めた攻撃で、試合の主導権を握りたいところだった。

 試合は3回が終わり0-0。均衡した展開で先に仕掛けてきたのは、馬淵だった。

 4回表、一死から藤蔭先発の小宮大明が明徳の4番・安田陸に死球を与えた直後のことだ。5番・奥野翔琉の時にエンドランを仕掛け、これが三塁打となり明徳が1点を先制する。この場面を竹下はこう振り返る。

「対談でエンドランの話になった時に、『オレはやらない』と言いつつも、きっとどこかで仕掛けてくるだろうなという雰囲気は感じていました。ただ、やってくるなら中押しやダメ押しの場面だろうと。だから、あの状況でやってくるというのは予想していませんでした。こっちが先にやりたいことを、しかも一発で決めてくる。さすがだなと思いました」