2019.08.10

選手たちが持ち帰る「甲子園の土」は、
ブレンドのこだわりがスゴイ

  • いとうやまね●文 text by Ito Yamane
  • photo by kyodo news

スポルティーバ・トリビアvol.5【甲子園編】

 敗れたチームの選手たちがベンチ前の甲子園の土をスパイク袋に詰める姿は、日本の夏の風物詩のひとつだろう。始めたのが誰かは諸説あるが、汗と涙がしみ込んだ焦げ茶色の土は、今も昔も球児たちの青春の象徴である。基本、持ち出し禁止なのだが、球場の所有者である阪神電気鉄道さんの心意気で、この伝統が続いている。

甲子園の土を袋に詰める選手たち 甲子園の土は、鹿児島県志布志市の「黒土」と京都府城陽市の「丘砂」のブレンドでできている。年によっては他地域の土や砂が入ることもあるという。火の国・鹿児島には火山がある。黒土のおもな成分は火山灰で、腐植が豊かなため暗褐色を呈している。学術名は「黒ボク土」。歩くとボクボク音がするというので、この名が付いたそうだ。軽くて非常に保水性が高い。片や「丘砂」は明るいベージュで水はけが良い。このふたつのブレンド比率は季節や天候によって変えるのだという。基本的には、夏の場合、土が6で砂が4だとか。

 甲子園の土には研究と改良の歴史がある。開場当時グラウンドの土の責任者だった石川真良氏は、各地から土と砂を取り寄せ、何度もブレンドして理想の土を追い求めた。白球が見やすい黒土で、大会の長丁場や、さまざまな天候にも耐えうるグラウンドをめざした。こうして生まれたのが、甲子園の土のベースになっている。石川氏は「甲子園の土の生みの親」と称されている。

 現在、その志を継いでさらなる改良を続けているのは、阪神園芸株式会社のみなさんだ。試合中もグラウンドに目を光らせている。ちなみに、甲子園に補充する土は年間で2トンを超えるそうだ。その一部は前述したとおり、球児たちが大事に持ち帰っている。

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