2019.08.09

背番号17の記録に残らない好プレー。
国学院久我山を初勝利に導いた

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 28年ぶりに西東京大会を制し、夏の甲子園に乗り込んできた国学院久我山の初戦の相手は、優勝経験(2013年夏)がある前橋育英(群馬)だった。

 1回裏と2回裏に1点ずつ失い、3回表に2点を返して同点に追いついたが、先発の高下耀介が5回裏に2点を奪われて再びリードを許した。しばらく夏の甲子園から遠ざかっていた国学院久我山と、4年連続出場の前橋育英では選手の経験値が違う。ここで前橋育英に流れが傾いたように見えた。

 しかし、国学院久我山は諦めなかった。
 
 6回表に五番・高下のタイムリーで1点を返すと、その裏に1点を失ったものの、3-5で迎えた7回表にツーアウトからの5連打で6-5と逆転。8回表にも1点を加えて競り勝った。

 前橋育英のエース・梶塚彪雅(ひょうが)は、群馬大会で全5試合に先発し、40イニングを投げてわずか4失点。その好投手を国学院久我山打線の粘りと勝負強さが上回り、春夏を通じて6回目の出場となった甲子園で初勝利を挙げた。

甲子園で初勝利を挙げた国学院久我山 この試合で”記録に残らない好プレー”を見せたのが、国学院久我山の背番号17のキャプテン、中澤直之だった。

 ピンチではマウンドまで伝令に走り、攻撃のチャンスでは三塁コーチャーズボックスから的確な指示を送った。7回表のチャンスでは、打席に立つ双子の弟・中澤知之のすぐ近くまで駆け寄ってアドバイスを伝えた。

 中澤直之が言う。

「前半のピンチでマウンドに伝令に走ったときには、『1点は取られても大丈夫』と伝えました。みんなは落ち着いていたので、不安はありませんでした。

 僕たちの代が最上学年になった時に、『甲子園で校歌斉唱する』という目標を掲げたんです。西東京大会の優勝に浮かれることなく、全員で目標を再確認しました。エースの高下は『1回戦で勝たなかったら、甲子園に来た意味がない』とまで言っていましたね。今日の試合では、彼が『勝ちたい』という気持ちをピッチングで表してくれました」

 西東京大会の5回戦以降、4試合を3失点以内で完投してきた高下は、制球に苦しみ9安打を打たれながらも大量失点を許さなかった。