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霞ケ浦・鈴木寛人に甲子園の洗礼。
それでもスカウトは伸びしろを確信

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 それはまるで、血に飢えた猛獣の檻(おり)に入れられてしまった草食動物のように見えた。

 霞ケ浦(茨城)のエース・鈴木寛人は、大会前から星稜(石川)の奥川恭伸に次ぐドラフト候補右腕として注目されていた。186センチの長身から腕を縦に振、最速148キロを誇る本格派。2学年先輩には広島に進み、今や売り出し中のリリーフ右腕・遠藤淳志がいる。

 遠藤の高校時代は3年春まで登板機会が限られ、夏に茨城大会準優勝の立役者となり評価を高めた。その遠藤を尊敬する鈴木もまた、夏にかけて一気にスカウト陣の評価を高めたという共通点があった。

履正社から3本塁打を浴びるなど、3回途中7失点で降板した霞ケ浦のエース・鈴木寛人履正社から3本塁打を浴びるなど、3回途中7失点で降板した霞ケ浦のエース・鈴木寛人 しかし、甲子園の初マウンドで鈴木は洗礼を浴びた。2回1/3を投げて被安打7、被本塁打3、失点7。早朝8時台にはマウンドから消えていた。

 相手の履正社(大阪)は今春センバツ(選抜高校野球)で、星稜・奥川の前に3安打17奪三振に封じられていた。その後は打倒・星稜を目標に、奥川クラスの好投手を打ち込むために振り込んできた強豪である。

 2年生ながら3番を任される左の強打者・小深田大地(こぶかた・だいち)は、試合前から気合がみなぎっていた。

「(鈴木は)148キロが出ると聞いていますし、すばらしいピッチャーなんですけど、映像を見た感じでは奥川さんほどはないと思いました。スライダーとフォークは落差があるので、ワンバウンドになる変化球を追いかけてしまうと高めのストレートを打てなくなってしまいます。意識のうえではスライダーへの割合を増やして、ストレートは反応で打とうかなと思っています」

 春に好投手に完膚なきまでに叩きのめされた悔しさをぶつけるように、履正社打線は猛威をふるった。立ち上がりには1番の桃谷惟吹(いぶき)が鈴木の145キロのストレートをとらえて、右打者ながらライトスタンドに放り込む先頭打者弾。主砲の井上広大はレフトポール際に運び、8番打者の野上聖喜(いぶき)まで身長167センチとは思えない強烈な2ラン本塁打を放り込んで、鈴木にとどめを刺した。

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