オリックス中川圭太が最後じゃない。ふたりのPL戦士が都市対抗で躍動 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 そして、社会人で注目の「PL戦士」は前野だけではない。PL学園で前野と同期だった中山悠輝(東京ガス)も忘れてはならない存在である。

 中山は前野以上にドラフト候補と注目されながら、指名を見送られてきた強打の内野手だ。昨年のドラフト前、あるスカウトがため息を漏らしながらこう語っていたのが忘れられない。

「期待して何度も見にいくんだけど、もうひとつ物足りないんだよね」

 高い潜在能力を秘めながら、殻を破りきれない年が続いていた。だが、中山も今年に入って春先から見違えるようなプレーを見せている。

 3月のJABAスポニチ大会では、東海理化戦でホームランを含む4打数2安打3打点。持ち前の勝負強さに加えて、たとえ2ストライクに追い込まれてもファウルで粘るしぶとさが出てきた。さらに守備中もフェンスを恐れずに果敢にフライを追う。その鬼気迫るプレー姿からは、ラストチャンスにかける男の覚悟がにじんでいる。

 東京ガスの山口太輔監督は中山についてこう語っていた。

「今年からキャプテンになって、キャプテンとして4番として『チームを勝たせるんだ』という思いが見えるようになってきました。自分が打つ、打たないでなく、チームを勝たせる。前向きな声も出るし、いい雰囲気になっています。持っているものからすれば、もっと早く力を発揮できていたはずですが、近年は腰の状態が悪かったこともマイナスに出たのかもしれません。今年は体も万全ですし、このまま息切れすることなくシーズンを過ごしてもらいたいですね」

 中山の所属する東京ガスは東京二次予選で敗退したものの、中山個人は明治安田生命(東京都)に補強選手として指名された。初戦は18日のHonda熊本(大津町)戦。補強してくれたチームへの恩義を果たすため、そして自身の運命を切り拓くために中山は渾身のプレーを見せるに違いない。

 前野は今も中山とよく連絡を取るという。

「性格は自分と真逆ですね。自分は物静かなほうですけど、中山はガツガツいくし、やるときはやる男です」

「遅れてきたPL戦士」の魂のこもったプレーは、バックネット裏で見つめるスカウト陣のハートを揺り動かすかもしれない。

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